03.そして何かが動き出した その23
常盤さんが帰った後、俺らは引越しの準備に取り掛かった。
フロやトイレを別にすると、今住んでいる部屋はダイニングと俺の私室兼寝室だけになるので、ダイニング側に4人、寝室に4人という組分けにする。
分け方ではひと悶着あったんだが、寝室は俺と鏡介とヒビキとシデン、ダイニングはケイとテルミとクリンとレイカが分担してやることになった。
「よっと、これとこれとこれはいらないよな」
「こらヒビキっ、貴様ッ、何をしているのだっ!」
「あぁ?何って、いらない雑誌を分けているんだよ」
「嘘を言うな!貴様が捨てようとしておるのは全てラジコンの本ではないかっ!」
「別にいいじゃねぇかよ、シデン。全部捨てるわけじゃないんだから」
「ダメだダメだっ、天が許そうと私が許さんッ!」
本当は俺のものなんだが。
「クリンさん、あなたは何をしているのでしょう?」
「あ、いえ、ちょっと汚れていたのでぇ」
「だから舐めるのは止めてくださいと、何度も言っているでしょうっ!」
「あうぅぅ、すみませぇん」
「まったく、電気製品に水は大敵でしょう」
クリンの奴、何を舐めたんだろうか?
「この家を離れるのは、ちょっと名残惜しいわね」
「え?そうなの、レイカお姉ちゃん?でも・・・・・・」
「そりゃあ、この姿になったのはついさっきだけれど、私はそのずっと前からここにいたのだもの。愛着だってわくというものよ。
ケイちゃん、あなただって、ずっといた所には愛着が湧くでしょう?」
「そうなのかなぁ。じゃあ、ケイがお兄ちゃんのそばにいつもいたいって思うのも、いつもお兄ちゃんが持ち歩いていたから、なのかなぁ?」
「そうそう、きっとそうよ。あ、ケイちゃん、そのお皿はこっちね」
「はーい」
そういえばケイって、うちのモノ軍団の中では一番初めに擬人化したのに、一番幼い感じがするよなぁ。
そんなことを聞きながら、俺は机周りをごそごそと片付けていた。去年、このアパートに引っ越したときに使って、そのまま取っておいたダンボール箱をもう一回組み立てなおし、教科書とか参考書とか身の回り品とかを、鏡介に手伝ってもらって詰めていく。
「あれ?」
「どうしました?」
「ん、あ、いやここに入れといたお宝本、どこにやったかなって」
「本ッスか?いや、俺、そこの引き出しは開いてないですけど」
そして、鏡介がずいっと顔を突き出してくる。
「それってやっぱアレっすか?アダルトなやつですか?」
「なんだよ、判るだろそのぐらい?」
「そりゃそうスけど、そういうのがあるんなら見せてくれても」
「無茶言うなよ、まわりにこんなに女がいるところで見れるか?俺だって見てないんだぞ」
「あー、それもそうっスね」
とりあえず、どこに行ったのか判らない(たぶんうちのモノ軍団の鏡介以外の誰かが捨てた)お宝本は諦めることにして、片付けを再開することにした。
どうも、作者です。
引越しの準備を一晩でやるというのはかなり無理がありますが、そこは多めに見てくださいw
次回は、新しい黒幕が現れます。とはいっても主人公とは後々堂々と張り合うので楽しみにしてください。
乞うご期待!