03.そして何かが動き出した その19
「シデン?」
ゼロ戦娘の手が止まる。
「ああ、ゼロ戦の後継機と呼ばれた紫電二一型、通称紫電改から取ったんだ」
「紫電改って、育毛剤ではなかったのでしょうか?」
「そっちのが後だって。他のも考えたんだけど、これが一番人名っぽいかなって」
テルミの横槍を軽くいなして、ゼロ戦娘のほうを見る。ゼロ戦は海軍機だから、海軍機のほうがいいかなーと思ったんだ。
ゼロ戦娘は、箸の先を咥えた状態で何か考えているようだ。
「ど、どうだ?悪くないと思うんだが」
ちょっと不安になり、思わずお伺いを立ててしまう。
すると、ちらっとこちらを見たゼロ戦娘の口元が、小さく動いた。
「何をうろたえているのだ、上官殿」
そしてそっと箸を置く。と思ったら、びしぃっと指を指し。
「貴様、いやしくも私の上官であるならば、それらしく振舞え!そんな弱腰の上官に使われていたなどと、私に思わせるでない!」
と、時代がかったというか、無遠慮な言葉を投げかけてくる。
なんか、あきれてしまった。
「そうか、イヤか。じゃあ別の名前を考えないとな」
「待てっ!」
と思うと、なぜか俺の肩をがしっと掴んでこっちをにらんでくる。
「いっ、いつ私が嫌だと言った上官ッ、私はッ」
「だめぇっ!」
そんなやり取りをしている間に、不意にケイが強引に割り込んできた。
ケイは、そのまま俺とそのゼロ戦娘とを、両手で押しのけるようにして引き離すと、そのまま俺にしがみつく。そして、その引き離したゼロ戦娘のほうを、きっとにらみつけた。
「お兄ちゃんを困らせるなんて許さないんだからっ!」
口調がきつい。結構本気で怒っているみたいだ。
「そもそもあなた、どうしてそんなに偉そうにしているのでしょう!?」
それに触発されたのか、テルミまでが口を荒げる。なんか偉そうだと思っていたのは俺だけじゃなかったらしい。
さすがに分が悪いと思ったのか、ゼロ戦娘は言葉を詰まらせる。が、目つきはさらに凶悪になっていく。言い換えれば、暴れる気満々だ。
「ちょ、ちょっとぉ、みんなぁ、け、ケンカは、止めようよぉ」
横からクリンが仲裁に入るが、その場の雰囲気に気圧されて小声になってしまっている。
その時になって、ようやく俺は、自分がやるべきことに気がついた。
「ほらほら、そのへんにしとけ。こんな狭い部屋の中でケンカなんかすんな」
立場がなくなったとはいえ、一応ここの部屋の主は俺、そして、こいつらの本来の所有者も俺だ。俺がしっかりしなくてどうするんだ。
とりあえずその一言でその場を鎮めると、俺はゼロ戦娘に向き合った。
どうも、作者です。
ゼロ戦娘の名前が決まりました。
ゼロ戦関係ないじゃないじゃないか、とおっしゃるかも痴れませんが、ゼロがつく女の子の名前が出てこなかったんです(TT)
次回も乞うご期待!