03.そして何かが動き出した その16
うちの冷蔵庫、料理する機能はなかったと思うんだが。なんてなことを考えながら、部屋の中に向き直ろうとした時。
視界の端に、深緑色の物体が床に転がっているのが入ってきた。そしてそれが何なのか、俺の頭が把握した瞬間。俺はそっちに飛び出していた。
「な、な、なんでこれがここにあるんだ!?」
それは、床に転がっているはずがない、俺の数少ない趣味のひとつである、ラジコンのゼロ戦だったのだ。思わず拾い上げ、表裏とひっくり返して状態を確認する。
「ああっ、それ、ヒビキさんが俺の顔面にぶつけた奴!」
後ろで鏡介が声を上げる。そうか、あいつのデコに貼ってあるシップはその名残(?)か。
「おい、ヒビキっ!」
俺の声にヒビキはめんどくさそうにこっちを向いたが、俺と鏡介の顔を見るとばつが悪そうな顔を見せた。
「このお前、なんてことしてくれたんだコラ!」
「そうだそうだ、この程度で済んだからまだいいけど」
「このラジコンが壊れてたらどうしてくれるんだ!」
「ちょ、お、俺のこと心配してくれたんじゃないんスか!?」
「お前は今のところ影響なさそうだからいいよっ!」
後から考えると、ヒビキにも鏡介にもずいぶんひどい事を言ってしまったと思うが、そのときは本気でそれどころではなかったのだ。
「あぁあぁ、大丈夫かオイ、どこか壊れたところはないか?」
あまりに心配で、つい必死になってそのゼロ戦を表裏とひっくり返して見てしまった。
そのとき。
きいぃぃぃぃぃぃんっという耳鳴りがした。
「わ、忘れてたぁーーっ!」
もう遅い、と判っていても叫ばずにはいられない。
そして俺の叫びは、目の前を押しつぶす真っ白い光の壁に吸い込まれて行った。
どうも、作者です。
いよいよこの次、新しい擬人化の登場です。
今までと微妙に違うキャラなので楽しみにしてください。
乞うご期待!