03.そして何かが動き出した その13
「・・・・・・お、収まったか?」
恐る恐る、薄目を開ける。
視界が真っ白ではないことを確認した俺は、思い切って目を開いた。
冷蔵庫が、やっぱり消えていた。余程驚いたのか、目の前でその様を体験したテルミとヒビキが、ならんで床に座り込んでいる。
そして。
「お呼び出しいただき、ありがとうございます」
冷蔵庫のかわりに、真っ白な着物、まさに着物を着た女の人が、正座していた。色白で目元が涼しげで、癖がない黒髪を背中に流している。そしてその座り方も自然で、そのまま生け花なんかをはじめそうに見える。
雪女?と、本気で思ってしまった。
「私、ただいま擬人化いたしました、冷蔵庫でございます。将仁様、そして皆様。ふつつかものですが、どうぞ、よろしくお願いいたします」
あっけに取られる俺たちを目の前にしながら、その雪女?は三つ指をついて丁寧に頭を下げる。テレビでも見たことがないその仕草に、ちょっとどきりとしてしまった。
「さて、挨拶はこのぐらいにして、将仁くん」
ん?と思ったところで、その女の人は流れるようなしぐさで立ち上がり、こちらを見てにこっと笑った。
「な、何ですか」
「あなた、昨日、今日と朝ご飯を食べていないでしょう?」
「は?」
「朝ご飯は一日の前半のエネルギーを補給するためのものなのだから、摂らなければいけないわ。特に将仁くんは育ち盛りなのだし」
なんだなんだ?口調が変わったと思ったら、いきなり飯の講義が始まってしまった。
「私が来たからには、そのあたりはちゃんと管理しますからね。良いかしら、将仁くん」
「あ、は、はあ、お願いします」
そういい切られ、思わず頭を下げてしまう。
雪女を連想させるこの冷蔵庫さん、ヒビキほどじゃないが意外に背が高い。俺と同じぐらいだ。着物を着ているので体のラインはよく判らないが、プロポーションは悪くなんじゃないだろうか。
「おにぃちゃんんっ!?」
「いでぇーっ!?」
そんなことを考えたとき、なぜか俺はわき腹をケイに思いっきりつねられた。
「な、なにすんだよっ」
思わず手を上げそうになってしまう。だって俺はまだ何もしていない。
「ううぅ、だって、だって、だぁぁってぇぇぇ」
う、そ、そんな泣きそうな目で見るんじゃない、怒れなくなるじゃないか、まったくこの妹もどきは俺のあしらいばかりが上手くなりやがってからに。
「ああああああ、わかったわかった、泣くなってば」
ケイの頭をなでてやると、ケイは目をうるうるさせながらも嬉しそうに笑った。
どうも、作者です。
前回、登場寸前で切ってしまった、クールな雪女冷蔵庫の登場です。
最近の雪女キャラは、なんか「可愛い」のが多いような気がしたので違う方向を目指したのですが、どうでしょうか。
次は、料理談義をぶった雪女冷蔵庫の包丁捌きが公開されます。
乞うご期待!