16.新旧おやくだち合戦 その19
「リムジンはいいなあ」
その頃。龍之介は贅沢なことこの上ない広々したリムジンの中で、ゆったりしていた。
乗せられる前にヒビキとシデンに脅かされていたため不安だったものの、いざ乗ってしまうと全く怖いことはない。
「判ってるじゃない、あんた」
運転席に腰掛けハンドルを握るメルセデスも満更でもない様子だ。
ヒビキが連れて来た相手が想定と遠ったため、始めは面喰っていたメルセデスだったが、龍之介本人とヒビキとシデンからの紹介を聞いて何があったのか理解すると、急にフランクになった。
「それにしても、改めて見ると、あんたってまさっちに似てないわね」
「そりゃ似てるわけねぇだろう、血のつながりは無ぇんだから」
「じゃあ、もしかして仲悪かったりする?ほら、義理の兄弟ってさ、どこかによそよそしさがあるじゃない。とくに同性だとさ」
「そうなのか?」
「遠うの?あたしが乗っけてきた経験だと、そんな感じなのが多かったんだけど」
「あいつとは、義理ってぇのともちょいと違うからなあ。でもまあ、少なくとも俺にとっちゃかわいい弟だしな。最近はあいつとの距離が遠くなった、なんて考えちまうが」
そう言いながら龍之介は、少しだけ寂しそうに窓の外を見やる。
「あいつは、このまま、俺と縁のない世界の住人になっちまうのかなってな」
「龍ちゃん……」
少しだけしんみりした空気が流れる。
「まあ、人に頼んのは嫌ぇだが人に頼られんのは嫌ぇじゃねえあいつのこった。遊びに来たぜぃとか言ってこっちから乗り込んで行きゃあ、無下に追い返しはしねぇだろうよ」
おめぇも覚えときな。そう言って、バックミラー越しに笑いかける。
その様子を見て、ああこの男は、自分の主人である将仁とは本当に仲がいいんだろうな、と、メルセデスは思うと同時に、少し心が温かくなったような気がした。