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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
16.新旧おやくだち合戦
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16.新旧おやくだち合戦 その8

「今日集まってもらったのは、他でもない」

その将仁が学校で授業を受けている頃。

西園寺の屋敷の居間に、擬人たちが何人か集まっていた。

「さっさと終わらせましょ、これからお客さんを迎えに行かなきゃならないんだから」

丸いテーブルに両手を置いてあかりが深刻そうに切り出した言葉に、最初に、だが面倒くさそうに反応したのは、メルセデスだった。

「あっしも同感っす。旦那方が来るまでにゃあ、芝刈りもやっときたいし」

続いて、はさみが口を開く。こちらもどちらかといえばめんどくさそうなニュアンスを含んでいる。

その横では御守がずずっとお茶をすすり、その後ろではクレアが腕を組んで壁に寄りかかっている。

「私たち5人だけというのは~、何か意図があるのでしょうか~?」

やがて、お茶を飲んで一息ついた御守がのんびりと口を開く。

「ああ。ここにいるメンバーは、私が意図的に集めた」

あかりは、それに真顔で答える。

その言葉通り、その部屋にいるのは、将仁が「年長組」と呼んでいる、昨日その姿を得た擬人化たちだった。

「単刀直入に聞こう。皆は、自分の今の立場に、不満はないか?」

そして、あかりは、彼女らに向けてそう問いかけた。

「不満、ですか~?」

「私は、将仁様に、蔑ろにされているのではないかと思うのだ」

「はぁ?何言ってんの、マサっちがそんなことするわけないじゃない」

真っ先に反論したのは、またもメルセデスだった。

「・・・・・・私は問題ない。・・・・・・必要とされるときに応じればいい」

後を追うように、クレアも重い口を開く。

「あっしも同意見っすねえ。そもそも若はつい最近までお庭に縁が無かったわけっすから、関心が向かなくてもしょうがないっしょ」

そしてはさみも同じような反論をする。

「それにですね~、将仁さんは、私たちを必要と思ったからこそ~、新しい姿と名前をくれたのではないのですか~?」

最後に、御守もそういった意見を述べる。結果、あかりの言葉に同意するモノは誰もいなかった。

だが、あかりはそのことを予測していたかのように、更に語気を強めて発言した。

「それは私も否定しない。だが、考えてもみてくれ。皆は自分の役目を、奪われていると感じたことはないか?」

その瞬間、思い当たる節があるのか、そこにいるモノたち全員が反応を見せた。

「たとえば、御守。最近はどんな情報もインターネットで調べられるようになっているから、書物の地位は低くなっている。そして、インターネットに繋がるモノが、新参者たちの中に2人もいる」

御守は黙ったままメガネをくいくいと直す。さっきより表情が少し固い。

「それに、将仁さんはまだお若いから、乗り物に乗る際には自分でハンドルを握りたいと思っているようだ」

メルセデスは短くうめくと困ったように頭を掻いた。

「正直なところ、遺産の管理は人に任せきりで、ほとんど関心を向けて下さらないし」

「・・・・・・・・・・・・発言の意図が、掴めない」

クレアは、ほとんど反応しない。もっとも、返事がいつもより遅いことが、動揺を伺わせる。

「そもそも、我々は長年西園寺家に仕えてきた存在だ。本来であれば我々があの立場にあるべきなのだ。それが、どこの馬の骨とも判らぬ新参モノどもに追いやられて良いはずがないのだ」

その前で、あかりが拳を握りまるで演説でもするように声高に言葉を並べる。

「でも、仕えたって言ったってさあ、まさっちに会ってこうなるまで、あたしらは所詮は道具の延長でしかなかったじゃん。静香様が危機に陥られていた時にも、何も出来なかった。それで『仕えた』なんて言っていいのかな?」

「くっ・・・・・・」

だが、反論されるとは思っていなかったのか。メルセデスの言葉に、あかりは早くも言葉を詰まらせた。

「それに~、これを見て下さいな~」

後を追うように、御守がいつも持っている大きな本を開いてテーブルの上に置く。そこには、将仁とケイやテルミなどの『年少組』擬人化たちとが乗り超えてきた危機のことが事細かに記されている。

「あの子達は~、将仁さんと一緒に、何度も危機を乗り越えています~。それはつまり~、あの子達と将仁さんの間には~、それだけ強~い絆があるということです~」

「・・・・・・昨日出会ったばかりの私達には・・・・・・ない」

そう呟いて、クレアががっくりと肩を落とす。

言われるまでもなく、彼女達は同じ擬人化として、将仁と一緒にいた時間も短ければ、共に何かをやったということもない。そういう意味では、関係を築くにはすでに出遅れているのだ。

彼女ら個々の能力は、確かに高い。だが、彼女達は同時に、将仁自身が努力の人であり、能力だけで人を判断しないことを知っているので、それはイニシアチブにならないことも判ってしまっているのだ。

そのことを改めて思い知らされ、年長組たちはそろって肩を落とす。

「だから、この話をしているのだ」

だがその時、見計らったようなタイミングであかりが口を開いた。

「すでについてしまった差を埋めるのは容易ではない。だがそれならば、同じスタートラインに立てるフィールドで勝負すればよいだけのこと」

「同じスタートラインっすか?」

「そうだ。あるだろう、あの小娘達がまだ関わっていない人脈が」

「人脈って、静香様がらみの関係?それはまだまさっちとも関係が無い所なんじゃない?」

「そうではない。ほら、もっと近い関係があるだろう」

「もっと近い関係ですか~・・・・・・ふ~む」

あかりの意図が汲み取れないのか、擬人化たちが考え込んでしまう。

「・・・・・・親子関係、か」

やがて口を開いたのは、クレアだった。

「そうだ。今日ここにおいでになるのは、将仁様の育ての親。今の将仁様を作り上げた存在。こう言っては語弊があるが、将仁様との関係は静香様より強い。それを味方につければ、将仁様との関係に優位性を得ることができるはずだ。

そのためにも我々は、御両親にあの小娘たちよりも信頼されなければならないのだ」

ここぞとばかりに、あかりが再び拳を掲げて言葉を連ねる。その様子はまるで、声高に演説をしているかのようだ。

「やれやれ、あかりさん。わざわざメンバーを選んで集めてんすから、もっと素直になりやしょうや」

だがその時、不意に、はさみが、横から口を挟んできた。

「あかりさん、もっと若とお近づきになりたいんでしょ?」

その瞬間。拳を掲げたあかりが、ポンッと音がしそうな勢いで顔を真っ赤にした。

「な、なにふざけたことを言ってるんだ、わわわ私は、住まいとして、その、これから共にあることが絶対であるのだから、それなりの扱いをだな」

そして、言葉までがしどろもどろになる。

「はいはい判りました判りました、まったく、子供じゃないんだから」

「・・・・・・真剣に受け取った、私がバカだった」

「あかりさんって~、そういう性格だったのですね~」

そんなあかりの様子に、皆が一様に呆れたような態度を見せる。

「お、おまえたち、その態度は何だ!おまえたちは、隅に追いやられてもいいと言うのかっ!?」

さすがにここまで不利になるとは思っていなかったらしい。あかりがヒステリックな声をあげる。

「そんな顔で言っても、ぜーんぜん説得力ないっすよ」

「はさみぃーっ!元はといえば、貴様が変なことを言い出すからであってだなぁ!」

「まあまあまあまあ、落ち着きましょう、あかりさん~」

そして、御守が、諭すような口調でとどめの一言を口にした。

「あかりさん。古人曰く、『人を感動させたければ、まず自分が真心を吐露せよ』です~。他人の信用を得るには~、何より自分を包み隠さないことが大切なのですよ~」

「~~~~~~~~~~~~っ!!」

とうとう反論する言葉が無くなったのか。

あかりは顔をこれ以上ないぐらいに真っ赤にして。

「ああ、そうだ、そのとおりだ!私は、私は女の身になったその瞬間から、将仁様をお慕いしているのだ!ぎゅーってしたいし、なでなでもしたいし、きゃっきゃうふふもしたいのだ!一日中見ていたいし、匂いだって一晩中嗅いでいたいし、そっ、それに、優しい声なんかかけられたら、天にも舞い上がってしまうぐらいうれしいのだぁっ!!」

まわりで聞いているだけでも恥ずかしくなるようなセリフを、大声で叫びたおした。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・こ、これで、満足かっ」

そして、まるで100mを全速力で突っ走った後のように息を荒げる。

聞かされたモノたちは、それに対して様々な反応を見せる。

「あ、いやぁ、そこまで言ったつもりはなかったんだけどさぁ」

すこし表情を引きつらせたメルセデスが、困惑したような声を上げる。

「一見クールビューティー、しかしてその本質はムッツリスケベだったと~、あかりさんへの認識を変えたほうがいいかもしれませんね~」

御守は、困ったような笑顔を浮かべつつ哀れむような目であかりを見る。

その後ろでは、あいかわらず無表情で腕組みしたままで頷くクレアの姿があった。

「きっ、貴様らっ!言えと言ったのは貴様らだろうが!人にさんざん言わせておいて自分は澄ましたキャラを演じるなど卑怯の極みだああああぁっ!」

洗いざらいぶちまけて今更恥ずかしくなったのか。顔をトマトのように真っ赤にしたあかりが鼻息も荒く反論する。おそらく、将仁も、静香も、ここにいない人は誰一人として想像できないあかりの姿がそこにあった。

「ううぅ、なぜ私だけがこんな恥ずかしい思いをしなければならないのだ」

そしてそのまま、がっくしと肩を落とす。その姿は、全国大会に出る前に敗退した高校球児のようにさえ見える。

その時、あかりの肩をぽんと叩く者がいた。

「そんな落ち込むこたぁないすよ。それがあかりさんの素直な気持ちなんでしょ?」

はさみだった。

「まあ、あかりさんのはちっとばかし行きすぎな感じぁしやすが、でも若に気ぃ向けてほしいってぇ気持ちはあっしも同じっすよ」

そして、メルセデスたちのほうを見やる。

「で、その点だけは、ここにいる皆が同じ気持ちっしょ」

すると、少しの間の後、前髪をかき上げながらメルセデスが口を開いた。

「んー・・・・・・まぁ、そりゃあ、ね」

「・・・・・・持ち主のことを、知りたいと願うのは、当然」

クレアが頷く。

「お前達・・・・・・」

その様子を見たあかりは、感動したような表情を浮かべる。

そして4人の目は、まだ何も言っていない御守に視線を向ける。

「あの~、皆さん?私に~、何を期待しているのでしょうか~?」

「ちょっとぉ、御守、みんなノッてんだから空気読みなさいよぉ」

メルセデスがちょっとあきれ気味に言葉を投げかける。

「御守さんも、若に大切にしてほしいでしょ?」

「知られたからには一蓮托生。付き合ってもらうぞ」

結局は自分の目論見どおりに事が運びそうになったため、あかりも元気を取り戻して御守に詰め寄る。

その後ろでは、相変わらず無表情なまま、それでも大きくうなづいたクレアが、やはり御守を見ている。

「ふぅ、やれやれ、皆さん下心がみえみえですね~」

これは説得できないと思ったのか、それともはじめから説得するつもりなどなかったのか。御守は大げさにため息をついた。

「まぁ~、私にもそういう気持ちはありますし~?誰かが第三者的な立場でフォローしないと収集がつかなそうですし~。仕方ありませんね~」

そして、御守は吹っ切れたように笑った。

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