15.とうとう来ました西園寺本家 その26
頃合を見て、目を開く。
「あ、あれ?」
そして、目の前にいるはずのナミの姿を見て、俺は愕然とした。
ものすごい美人になっていたとか、とんでもない姿になっていたとかではない。
ぶっちゃけて言うと、『何も変わっていない』から驚いたのだ。相変わらず、頭にはどでかいゴーグルと鳥の羽にも耳にも角にも見えるアンテナがついたヘッドギアをつけているし、コートも、その下の軍服も、ごっつい足もそのまま残っている。
まさか、失敗!?15回目にして初めての失敗なのか!?
「!?」
我に返るや、ナミは俺の手を振り解きやがったのだ。
そして、自分の頭に手をやる、もちろん、ヘッドギアがある。続けて下を見ると、相変わらずごついままの足が目に入る。
「~~~~~~~~~~~~~~っ!」
と、そのナミがぷるぷると体を小刻みに震わせはじめた。
「・・・・・・あ、えーと・・・・・・」
「西園寺将仁おおおおっ!」
と、いきなりものすごい大声で怒鳴りやがったのだ。
あまりに突然だったので、ちょっとだけ後ずさってしまう。
すると、ナミは拳を振り上げてこう叫んだ。
「これはどういうことですか!何も変わっていないではないですか!私が、私が、どれだけ期待したと思っているんですか!」
「そ、そんなこと言われても、俺だってこんなケースは初めてで」
「言い訳無用!」
俺の言い分を全く素振りすら見せず、ナミは手のひらをこっちに向ける。って、こいつの手にはレーザー砲が装備されてるじゃねぇか!?
なんて思った時には、そいつの手のひらは確実に俺に向けられていた。
「きゃあっ!?」
次の瞬間。ナミは、うちの数人のモノたちに取り押さえられていた。
「だ、大丈夫ッスか!?」
ナミが押さえつけられるのとほぼ同時に俺の前に立った鏡介が、バリアーを前に立てながら俺を見る。
「あ、ああ」
そう答えながら、自分の体を見る。どこにも痛みはないし、焦げた跡もない。もし撃たれていたら、レーザーは光だから、一瞬で届くはずだ。
と、その俺の足元に、何かが転がってきた。
拾って見ると、それは、でかいゴーグルと角みたいなアンテナがついたヘッドギアだった。ちょうど、ナミの頭のメカメカしい部分だ。それがひとかたまりになって転がってきたので、最初は、ナミの頭が外れたのかと思った。
まさか壊れたか!?と思ったときだ。
「離せーーーーっ!」
聞いたことがあるようなないような声が聞こえた。
そこには、数人のモノたちに完全に押さえ込まれた、クレアより明るめの銀髪の女の子がいたからだ。見覚えのないその子が、聞き覚えのある声で喚いている。
どうやら、失敗ではなかったらしい。
「えーと、まあ、離してやってくれ」
俺が声をかけると、その子を押さえつけていたモノたちが納得いかないような表情をしながら彼女の上から退いていく。やがて最後までその子の右腕を押さえ込んでいたシデンが離れ、その女の子はようやく開放された。
「!」
その子は、右腕が開放されるや、がばっと起き上がり手のひらを素早く俺に向ける。
「・・・・・・あ、あれ?」
だが、レーザーが出るどころか何も起きない。
「ふんっ!ふんっ!」
その子はおなじような動きを何度か繰り返すが、何も起きない。
そして彼女は、自分の右手を自分の顔の前まで自分の手を持って行き、そして目をひん剥いた。
そして。俺が手に持っているヘッドギア(というかヘルメットというか)と自分の手を何度も交互に見返すと。
なぜかぷるぷると震えだし。
「う、うう、うわああああああああああああああああ!」
いきなり、大声で泣き出した。
・・・・・・どうすりゃいいんだ。
いきなりな展開に、俺は呆然とするしかなかった。