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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
15.とうとう来ました西園寺本家
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15.とうとう来ました西園寺本家 その19

「あー、疲れたー・・・・・・」

その日の夜。鏡介は1人、人気の無い路地を歩いていた。

「うちのモノたちも人使い荒いけど、将仁さんの友達も人使い荒いよなぁ」

彼の口からそんな愚痴が漏れる。そして首を左右に動かすと、コキコキという音が鳴った。

結局彼は、将仁が2日休んだから、という理由で、仕事を沢山押し付けられてしまったのだ。それは買出しに始まり、ギミック作成の手伝い、広告の印刷の手伝いなど、ほとんどが雑用だったがそれだけに手抜きができないものばかりだった。

「とりあえず、今後は代理で学校に行くのは、考えてからにしよう」

そんなことを言っているうちに、彼はT字路に設置されたカーブミラーの前にやってきた。

鏡介は、あたりに人影が無いのを確認すると、その鏡をじっと見つめる。まだ行ったことがない、西園寺本家へ向かうためだ。

彼の目の前で、鏡の中の光景がめまぐるしく変わる。目標を探しているのだ。もちろんこれは、鏡介だけにしか見えない光景だ。

だが、鏡介はその探査を中断すると、頭上を見上げた。

頭の上から、聞いたことがある爆音がしたからだ。

見上げると、何か光るものが飛んでいる。それが、足から火を噴いて空を飛ぶ、人の形をしたものだと判るのに、時間はかからなかった。

そして彼は、その飛行物体に見覚えがあった。

やがて、轟音とともにこちらに向かって来たそれは、激しく渦巻く風で砂埃を巻き上げ、地面に降り立った。

それは、背中に大きな翼を生やした、銀髪の天使のようだった。だがその翼は金属のような光沢を放っており、まだ半そでの人が目立つというのに、足首まで届きそうなロングコートを羽織っている。また、顔はその半分を隠すゴーグルと、鳥の風切り羽根のようなアンテナを左右から生やしたヘッドギアで覆われていた。

あっけに取られている鏡介の目で、その人影の背中に大きく展開していた翼ががしがしがしっと音を立てて見る間に折りたたまれていき、間もなく背中に隠れて見えなくなった。

「ターゲット、捕捉」

ゴーグルに緑色のラインが灯り、顔を上げると、その人影は機械で合成したような声でそう告げる。

「ターゲット、真田将仁。データ照合、90.83%合致、本人と断定。モード変更、レベルB」

そう言いながら、人影は左腕を前に突き出し、手のひらをその青年に向けた。

はっとした青年が、とっさに横に飛びのく。

その直後、赤い光線が、うなるような音と共に青年のいた場所を貫いていた。

光が消えた後、その光が命中したブロック塀にはゴルフボール大の穴がぽっかりと開き、その穴を中心に無残な焼け焦げが広がっていた。

「ターゲット、回避。攻撃を続行します」

その人影―コンバットドール「ナミ」が、左手の角度を微妙に調整しながら、機械的な声でそう告げる。

「ちょっと待てーっ!」

ナミが、あの光を放つ左手を自分に向けるのを見て、たまらず青年が声をあげる。

「い、いきなり何すんだよ、てめぇ俺を殺す気か!」

「私の任務は、真田将仁を成敗することです。私はその任務を遂行します」

青年の激昂に対し、ナミの回答はあくまでも機械的なものだ。

そして、間髪を入れず、ナミは左手から光を放った。その光は、掌の中心に見えるレンズから発せられている。

レーザー兵器だ。その高出力のレーザーはコンクリートブロックを易々と貫通し穴を開けてしまう。人体に向けて使えば、命中した箇所は瞬く間に焼き切られてしまうだろう。

だが。

光が消えた後も、青年は平然としてそこに立っていた。しかも、腕を交差させ、防御するようなポーズを取っているが、全くの無傷で。

「・・・・・・まったく、人間相手にしちゃ、やりすぎなんじゃねぇのか?」

その青年は、クロスさせた腕のむこうで、そう呟く。

そして腕をほどいたとき。青年の表情は、今までとまったく違うものになっていた。

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