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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
15.とうとう来ました西園寺本家
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15.とうとう来ました西園寺本家 その7

「うわあああああ!絵が、しゃべったあああああ!」

「きゃああああああ!?」

つい、叫んでしまった。ホラーな体験もオカルトな体験もここ数日で嫌と言うほど体験しているのに、それに加えて平面に映る顔とはしょっちゅう喋っているのに、なんでこんな悲鳴を上げてしまったのだろうか。後になって考えるとすごく情けない。

おかげで、うちのみんなが、一斉に俺のほうを向いてどやどやとやってくる。

「なんだなんだ、どうした一体」

「Whatがspeakしたデース?」

そしてみんながその絵を見るが、絵が動いているというのに、あまり驚いている奴がいない。やっぱり自分たちが元々喋らないようなものだったからだろうか。

「将仁、将仁?ほら、何もしないから、顔を見せて?」

改めてその肖像画を見ると、絵の中の人が立ち上がって、まるで窓から覗くようにこっちを見ている。

「な、な、なんだこれ!?」

なんかよく判らない状況に、俺の頭はかなりパニクっていた。

「将仁さん、落ち着いてください」

常盤さんの声でふと我に返ると、俺はなぜかその絵に向き合うような位置に置かれた椅子に、腰を下ろしていた。

「常盤、説明していなかったのですか!?」

「申し訳ありません、少しバタバタしていまして」

見ると、絵の中の人に、常盤さんが怒られている。なんか常盤さんが怒られるという光景が非常に珍しいので、なんかちょっとあっけに取られてしまう。

「い、今から、説明しますから、少し落ち着いて下さい」

「全くもうっ、急いで下さいねっ」

絵の人は、なぜかむくれながらさっきの位置まで戻って椅子に腰掛けると、またこっちを向いた。絵のくせに常盤さんを叱り飛ばすなんて、どういう素性なんだろう。

その絵の横で、常盤さんがこほんと咳払いをする。

「将仁さん。こちらは」

そして、絵に手を差し伸べると、こう言った。

「西園寺家の先代当主、西園寺静様です」

そして絵の人はにっこりと微笑みかける。

先代当主、西園寺静香。何度か過去に聞いているその名前について、記憶を掘り起こす。

「あーっ!?」

そして、思い出した。

「母さん!?」

その瞬間。絵の人が、ぱあっと表情を明るくしてこっちを見た。

「気付いてくれたのですね、将仁!」

よっぽど嬉しかったのか、絵の中から飛び出しそうなぐらいにアップになっている。加えて、目に涙までためている。その横では、常盤さんがなんかほっとした表情をしている。

だが、気付いて、といわれても反応に困ってしまう。なにしろ俺は、生まれた直後から別々に生きていたから、この人には何の感情もない。

「いや待て、母さんなわけないだろ。一年も前に死んでるわけだし。うちの鏡介みたく、擬人化なんじゃないのか?」

すると、その絵の人は見て判るほどしゅんとしてしまった。

「・・・・・・そうですよね、母親らしいことなんて、何一つしてあげられなかった女ですもの」

だが、一転して顔を上げると、とても真剣な口調でこう言い切った。

「でも、私は、擬人化ではありません。今はこんな姿ですが、私は、自分のお腹を痛めてあなたを生んだ、西園寺静香なのです」

なんか、また判らなくなってきた。俺が絵から生まれたなんてわけがないし、死んだはずの人が今こうしているってことは、幽霊の類なんだろうか。

「本当に、西園寺静香さん?」

「それは、私が保証します」

そう言ってきたのは、常盤さんだった。

「将仁さんは、魂がものに宿ることはご存知かと思います。こちらの絵には、先代の当主、西園寺静香様の魂が、宿っておられるのです」

「・・・・・・へ?」

一瞬、常盤さんが何を言っているのかよく判らなかった。

今まで、擬人化とか付喪神化とか、沸いて出た魂?が物に宿って云々というのは見てきたが、魂を別のものに宿らせるというのは初めてだ。

「私、一目でいいから、あなたの姿が見たかったのです」

そして、自称・俺の生みの母だと言い張る西園寺静香、の肖像画が話しはじめる。

俺を生かすために俺を手放した後、彼女は、そのことをずっと心に秘めて生きていたらしい。だが、自分の周りで自分の親族が次々と死んでいき、ついに自分も倒れてしまったとき、彼女はどうしても俺に会いたくなったんだそうだ。

その、俺に会いたいという気持ちが強かったせいなのか、気がつくと彼女の魂はこの肖像画に入り込んでいたらしい。

なんか、この世に未練を残した人が幽霊になる、という話によく似ている。

「それに気付いたとき、私は、静香様の最後の望みを叶えて差し上げたいと思いました。成長した一人息子、将仁さんの姿を、一目だけでも静香様にお見せしたいと」

そして、常盤さんは眼鏡を持ち上げ、目元を拭う。

そこまで言われると、こっちとしてもあまりひどいことは言えなくなってしまう。

「本当は、生きているうちにあなたに会いたかった。この手で抱きしめて、キスもしてあげたかった。母親らしいこともしてあげたかった。今となっては叶わないけど、でも、あなたはこんなに立派に成長してくれた」

絵の中の人も、言いながら、感極まったように泣いている。

「静香様あああああ!」

「常盤ああああああ!」

そしてついには、常盤さんと抱き合って、本当に泣き出してしまった。傍から見たら、常盤さんが額に抱きついて泣いているようにしか見えないのだが。

おかげで、こっちはちょっとしらけてしまった。

「どうしよう?」

「どうしようと言われましても、これはどうしようもないのでしょう」

「だよなぁ」

「Miss Tokiwaがeasilyにcryするのはin my knowledgeデース、but、Masterのmotherも easilyにcryするpersonとはout of my knowledgeデース」

「クールが売りの私だけど、少しだけ、もらい泣きしそうだわ」

「貴様ッ、そのようなことを言うでないッ!我まで、我までッ、泣けてくるわっ!」

うちのモノたちの反応も、もらい泣きする奴もいれば妙に冷めた奴もいてまあ様々だ。

ただ確実に言えるのは、静香さん(まだ母さんと呼ぶ気にはなれない)と常盤さんが泣き止まないと、話は進まないということだった。

どうも、作者です。

新キャラ、先代西園寺家宗主にて「子煩悩な二次元」西園寺静香の登場です。

実年齢より精神年齢が若めとなってい(るつもりであり)ますが、それはとり付いた「絵」に描かれた年齢が若い頃だったため、それに引っ張られてしまったためです。


とりあえず、彼女は絵の中で動き回って喋る以外特に何もしないはずですので、ご了承願います。

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