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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
15.とうとう来ました西園寺本家
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15.とうとう来ました西園寺本家 その3

リムジンに揺られて、どのぐらい走ったのだろう。

途中で高速道路に乗ったのは覚えているのだが、気がついたらなぜか山の中を走っていた。

このリムジンは、走っているのにおっそろしく静かだ。どのぐらい静かかと言えば、カウンターに置いたグラスに入った飲み物に、波が立たないほどだ。

本当の高級車というのはこういうものなんだろうか。

そんなことを考えていると、不意に右側が森から壁に変わった。壁と言っても味気ないコンクリートとかではなく、時代劇とかで武家屋敷のまわりに築かれているような、屋根のある白壁だ。

そして、その壁が何百メートルもずーっと続いている。

いつまで続くんだ、と思っていると、不意に車が止まった。

何事かと思って前を見ると、そこにはそれこそ時代劇で出てきそうな門が、でーんとそびえて道を塞いでいた。

俺たちはいつの間に江戸時代に迷い込んだんだろう。そんなことを思わせる光景だ。

と、その門が、木が擦れあうような独特の音を立ててゆっくりと開いていく。

門が開ききると、今度はリムジンがまるで流れ作業のようにスムーズに動き出し、その門の中にゆっくりと入っていった。

門を潜り抜けたむこうは、テレビや写真でしか見たことがないような、見事な日本庭園だった。今までそういうものに縁が無かったから詳しくは判らないが、手入れがかなり行き届いているのは間違いないだろう。

そして、その日本庭園の中に道路があって、そこを車で、しかもリムジンで走っているという今の状況に対して、贅沢なような、そして不自然なような感じを受けた。

「ここって、もしかして、西園寺の敷地なんですか」

なんとなく気になって、常盤さんに聞いてみる。

「はい。敷地面積は約8000坪。東都ドームの6割弱に相当します。ただしこれは庭園として壁で仕切られている範囲だけで、実際に西園寺家がこの近辺で所有する土地の総面積はその約20倍になります」

8000坪という時点ですでに十分凄いと思うんだが、その20倍なんて言われたら、どのぐらい広いのかもう想像もつかん。

あらためて、とんでもないものを引き継いでしまったと思い知らされた。

前を見ると、リムジンの向かう先に白い建物が建っていた。歴史の教科書で見た、鹿鳴館を連想させるデザインの、かなり年季の入った建物だ。

あれが、西園寺の屋敷なんだろうか。外壁と言い門構えといい庭園といい純日本的な感じだったので武家屋敷みたいなのを想像していたんだが、なんかちょっとイメージと違う。

まあ、レイカやシデンならともかく、テルミやバレンシアが武家屋敷に住むのはちょっと想像できないのでこのぐらいがちょうどいいのかもしれない。

そんなことを考えながら、俺は長いリムジンに揺られていった。

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