03.そして何かが動き出した その6
「それじゃ、行ってきまーす」
「ヒビキさん、クリンさん、留守番、頼んます」
そして、玄関のドアが閉められる。
「さてと」
くるっと玄関に背を向けたヒビキは、そのまますたすたとキッチンのほうへ歩いていく。
「やっぱり何もないよなぁ」
そして、冷蔵庫の中を見て改めてがっくりする。
「ヒビキさん、さっきあんなに食べたのに、もうおなかすいたんですかぁ?」
「あー、いや、別にそういうわけじゃないだけど、ガス欠になんないよう確保は必要かなってね」
「ふぅん、ヒビキさんはぁ、食いしん坊さんなんですねぇ」
「そう言わないどくれ、燃費の悪さはあたしだって自覚してる」
ちょっと苦笑しながら、ヒビキが冷蔵庫を閉めた。
ケイ、テルミ、そして鏡介は、電話の後で本当に来た常盤弁護士に率いられ、日常消耗品と、クリンの服を買いに行っている。
もとはといえば、クリンが「自分の服を一切持っていない」ということから、下着ぐらいは要るだろうという話になったのが始まりだった。そこから「石鹸や歯ブラシなどの消耗品を揃えよう」「外食は金がかかるから、自炊できるよう食料を買い入れよう」などという話になり、そしてそれらをまとめて買出しに行くことになった。
なんだかんだと言っても、真田家モノ軍団はあまり家の外のことを良く知らないため、引率と財布も兼ねて、常盤が彼らを案内することになった。
そして着る服が無い以上、クリンは外を出歩くことができない。鏡介は男なので、裸のクリンと一緒にすると危ないということで買出しに駆りだされた。そして「外に行きたい」と主張しまくったケイと、金銭感覚がある程度しっかりしていそうなテルミが行くことになり、この二人が残ったのだ。
「さてと、することもないし・・・・・・どうするかね」
「テルミさんも行っちゃいましたからぁ、テレビも見られません」
「昼前にゃみんな帰ってくるって言ってたし、今日は土曜日だから将仁も午後になりゃ帰ってくるし・・・・・・留守番ってのもめんどくさいもんだね」
そして、ヒビキは暇そうに大きなあくびをする。
「あ、そうだぁ。ヒビキさん、お風呂掃除、いっしょにしませんかぁ?」
思い出したように、クリンが口を開いた。
「フロ掃除ぃ?なんでまた」
「だぁってぇ、お風呂は私のいた所ですからぁ。それにぃ、将仁さんが一日の疲れを、体の汚れと一緒に落とすところですものぉ、綺麗にしておきたいじゃないですかぁ」
ちょっと照れくさそうに、クリンは自分の頬をぽりぽりと掻いた。
「悪いけどあたしゃ遠慮しとくよ、二人じゃ狭いだろ」
「あはは、そういえばそうですねぇ」
そして家をきょろきょろと見回してこうつぶやいた。
「でもぉ、将仁さんも大変ですよねぇ。今まで一人暮らしでしたのにぃ、いきなり5人も増えちゃったんですからぁ」
「うーん、そうだなぁ、こう言っちゃなんだけど、あまり広くないもんなぁこの部屋」
「そうですよねぇ、私ももっと広いお風呂で洗って差し上げたいですぅ」
「・・・・・・ちょっと待て、クリンお前、そんな姿になってまだ将仁と一緒にフロ入る気か?」
「えっ!?・・・あ、あはは、じょ、冗談ですよぉ、あはははぁ」
「・・・・・・お前、さっきマジだったろ」
「はうぅ、そ、そんなこと言っていじめないでくださいよぅ」
どうやら、本音を漏らしてしまったらしい。ちょっとの沈黙の後、クリンは思いっきり突っ込まれていた。
どうも、作者です。
ヒビキとクリンのキャラがなんとなく判るような話かな〜と思っています。
今まで書いていませんでしたが、作品に対するご意見・ご感想など、お待ちしています。
次は、主人公と合流です。
乞うご期待!