14.もののけ全面戦争 その16
「何だてめぇらは!?」
そこには、怪しすぎる連中が、リビングの窓を割って入って来ていた。
そいつらは、全員が黒いツナギを着て、手には木刀やら金属バットやらの得物を持っている。そして、フルフェイスのヘルメットやサングラスにマスク、中にはガスマスクなんかで全員が顔を隠している。
その姿は、どう見ても過激派か銀行強盗かテロリストだ。
「おーらあああああっ、しねえええええええっ!」
その一人が、いきなり木刀を振り上げて向かって来た。
それを皮切りに、過激派が次々と得物を振り上げ向かって来る。この過激派も、俺を狙っているらしい。
「うるせええええ!」
その時、リビングのテーブルが舞い上がった。
テーブルは、天井にぶつかってルートを変え、過激派の一人を巻き込んで床に落ちる。
「だりゃああああああ!」
その直後、それと別の過激派が、りゅう兄のパンチを食らってひっくり返る。
「ぬおおおおっ!」
そしてそいつから木刀を取り上げると金属バットを両手で持った過激派に接近し、腕の間に木刀を差し込み、腕と交差するほうに力任せにぐるりとひねる。
「ぎゃっ!」
そいつは、悲鳴を上げてバットを取り落とす。そしてがら空きになったそいつのどてっぱらに、りゅう兄は前蹴りを入れた。
過激派がうっとうめき、そこにうずくまる、かと思ったが、りゅう兄の蹴りをもろに喰らったそいつは、バックステップして一瞬後には体勢を整えていた。
そこに、別の過激派の回し蹴りが飛び込んでくる。
りゅう兄はそれをさっきの木刀で受けようとした。しかし、その蹴りは、バキっという音と共にその木刀を真っ二つに叩き折ってしまった。
そして、かく言う俺も、決して余裕はなかった。バットを蹴飛ばしたところで、ガスマスク?を被った別の過激派が向かってきていたからだ。
そいつは、手に光るものを持っていた。それがナイフだと判った瞬間、俺は本気で避けていた。
「こっ、殺す気か!」
某3人組コメディアンの台詞を思わず叫んでしまう。
しかしその過激派はひるむどころか余計に鋭い攻撃を繰り出して来やがった。
こいつらは、マジで俺を殺しに来ている。やらなきゃ、やられる。
俺の生存本能が叫び、俺はかわしざま、パンチを顔面めがけて叩き込んでいた。
変なところを殴ってしまったらしく、拳に痛みが走るが、手ごたえは十分あった。それを示すように、過激派もぶっ飛んでいる。
だが、フィルターの缶がひしゃげたガスマスクをつけたそいつは、ダウンしたと思ったその直後には跳ね起きていた。こっちは未だに手が痛いってぇのに、えらい頑丈な連中だ。
こんな連中を相手にして、兄貴は大丈夫だろうかとそっちを見てみると。
「ばっきゃろーてめこのざけんなちっくしょうめぃこのべらぼうがぁ!」
やっぱり、認めたくないが兄貴は強かった。あの頑丈な過激派3人を相手にひるむどころかそいつらを圧倒するほどの立ち回りを見せている。さすがに無傷ではないみたいだが、今も、過激派を一人ぶん投げて壁に叩きつけたところだ。
その時気がついたのだが、兄貴が相手している過激派の背中には、一様に何かでっかい文字が書かれている。一文字で、漢字っぽいが、それ以上は見る余裕がなかった。
なんでって、過激派は俺にも襲い掛かってきているんだからしょうがない。
「こんにゃろ!」
渾身の右フックを繰り出すが、からぶってしまう。くそ、いい動体視力してやがる。
だが。かわされた右の、肘を突き出すと、あっちはバランスを崩した。この攻撃は予想外だったらしい。そこに左のボディーブローを繰り出したら、それはうまいことあっちの腹に当たったんだが、どうも手ごたえが鈍い。
と思った瞬間、俺はそいつに胸倉をつかまれてしまった。
そのまま軽々と持ち上げられると、あっと思う間もなく後ろのほうに放り投げられた。
ばりぃんっ!
なんかとんでもない音と共に、光景がめちゃくちゃになる。そして、ごん、という音と共に、頭に激痛が走り星が散った。
どうやら、窓を割って外に出てしまったらしい。だが、痛がっている暇もなく、ガスマスクをした過激派がすでに枠だけになった窓を開けて飛び掛ってくる。
なんとかかわした横をナイフが通り過ぎる。
立ち上がると、ガスマスクの過激派はまたナイフを突き出してきた。
「こなくそぉっ!」
それをパリングの要領でかわすと、伸びきった腕を一本背負いの要領で投げ、ようとした。
そのとき、足元が、突然、ぐらりと傾いた。