03.そして何かが動き出した その5
そのころ。
「よう、マサ。昨日はずいぶんと豪勢だったみたいだな」
学校に行った俺は、休み時間にいきなりヤジローのやつに冷やかされることになった。
「ん?あ、ああ、兄貴が来てさ。メシおごってやるからつきあえって」
「へー、いいよなお前の兄貴って弟思いでさ」
それは違うと思う。弟思いだったら出会った瞬間にこっちの頭が痛くなるまでヘッドロック&グリグリはやらかさないと思う。
「だってよ。あの子らってお前の兄貴の知り合いなんだろ?」
「は?」
なんか、話が俺の想像してたものと違う。あの子ら?
「お前の兄貴って守備範囲広いよな〜、ロリっ子から年上まで。うらやましいよ、俺にもそんな兄貴がほしいぜ」
そう言われた瞬間、俺は背筋が寒くなった。
そいつらは違う、人じゃないんだ、と言いそうになるのを懸命にこらえる。
「もしかして将仁、紹介されたんじゃないか?」
「なになに、何の話?」
「へー、将仁クンにもついに春が到来ってやつ?」
「いやいや甘いな、こいつに春が来るのは絶対に俺の後だって」
なんか、クラスメイトの間に、俺の心配をよそに変なほうに話が膨らんでいる。所々おかしな中傷が混じっているが、そこはあえて聞き流すことにする。
おかげで、ちょっとの間だが言い訳をひねり出す時間が稼げた。
「こら待てお前ら、勝手なこと言うなよオイ」
「でもなぁ、俺見たぜ?お前とお前の兄貴が3人の女連れて焼肉屋に入っていくの」
「なんでそういう発想しかできないんだお前らは。その3人は俺の親戚なの。近くに引っ越してきたっていうから顔合わせしただけだって。あ、兄貴はその引越しの手伝いしてだな」
だが、そう言いながらも、心の中では冷や汗を目いっぱい流していた。なにしろ全部が俺一人で組み立てた嘘だから、これ以上突っ込まれたら誤魔化し切れる自信はない。
だが、俺が断言した瞬間、クラス中にしらけた雰囲気が広がった。
「なんだ、つまんねぇの」
「そうだよなー、歩く朴念仁にそんな甲斐性ないよなー」
なんかひどい言われようだが、それでも俺はひとまずごまかせたことにほっとしていた。
あとは。
「なー、親戚ならさ、一人ぐらい紹介してくれよ。俺たち友達だろ?」
しぶとくたかってくるヤジローをどうやってごまかすか、だった。
どうも、作者です。
今回は主人公の学校での1シーンです。
必死になって隠そうとする主人公をお楽しみください。
しかし、こういうシチュエーションになると、たいがいの人はそれを隠そうとしますが、なんでなんでしょうねw
次回はまた家に戻ってまったりした時間が流れます。