14.もののけ全面戦争 その13
くそ、これまでか。どーせなら18歳になって○本や○DVDが堂々と見られるようになってからがよかった。いやそれ以前に、彼女が出来てからにしたかった。
またしょうもないことを考えてしまった、その時だ。
「だりゃあああああああっ!」
「ぐは!?」
視界の横から突然、雄たけびと共に白い光が飛び込んできて、甲冑女をぶっ飛ばした。
そいつは、甲冑女と入れ替わるようにして、俺の前に立っている。その両手には、不自然な白い光が点っていた。
「きょ、鏡介!?」
「怪我はないスか、将仁さん!」
そう。それは、ついさっき階段を駆け下りていったはずの鏡介だった。
「お前、さっき下に行ったんじゃ」
「洗面所の鏡に、将仁さんのピンチが見えたんで、急いで戻ってきたんスよ」
鏡介は、そう言って後ろを指差す。そこには俺の本棚があるのだが、その上に小判のかわりに鏡を持った招き猫の置物が置かれていた。
そんなもんは買った覚えがないんだが、鏡介はそこから飛び出して来たようだ。
「くっ、不意打ちとは卑怯な奴」
一方、鏡介にぶっ飛ばされた甲冑女は、壁に叩きつけられてからようやく体勢を立て直し、そんなことを口にする。
と、剣を持っていない左手を振り上げると。
「受けてみよ!」
と指先をこっちに向けて振り下ろした。
直後、バシバシバシ!という鋭い音と共に、眩しい光があたりに飛び散る。
甲冑女の指先から、微妙に緑がかった電撃みたいなものがこっちに向かって無数に放たれているのだが、それが、鏡介が突き出した手の前に現れたぼんやり光るガラスの壁みたいなものに当たって、色々な方向へと飛び散っているのだ。
初めて見るが、鏡介の前にあるあの壁みたいなのは、この前言っていたバリアって奴だろうか。ビームといいバリアといい、鏡介ってもしかしてヒビキやシデンよりずっと強いのではないだろうか。
一方、甲冑女が放つ電撃はバレンシアの目から出るアレによく似ているが、こっちは切れ目がない分タチが悪い。それを防ぐので手一杯なのか、鏡介もバリアの後ろで構えたまま動かない。
「ここは任せてください!将仁さんは避難を!」
バリアで電撃を受け止めながら、鏡介が叫ぶ。
「な、そんなこと!」
「こいつは俺じゃなきゃ相手できません!早く!」
鏡介は電撃を防ぎながら叫んでいる。だが、俺はそれに素直に従えなかった。
鏡介は俺と同じ姿をしているから、見守らなければならないような気がしたからだ。
だがその時、俺は突然襟首を掴まれ、有無を言わさずに部屋の外へと引っ張り出された。
「将仁、これはいったい、何の騒ぎだい?」
俺を引っ張り出したのは、赤いライダースーツの女だった。
ヒビキだ。いや、それだけじゃない。
「何者だあれは!」
そこには、真田家モノ軍団の武闘派ツートップのもう1人、シデンもいた。
「し、侵入者だっ!ムチャクチャな侵入者だ!」
俺は、そう答えるだけで精一杯だった。
「そうか侵入者か!」
するとシデンが色めき立って腕まくりして乗り込んで行こうとしたので、俺はあわててそれを止めた。
「上官っ、なぜ止めるっ!」
「ちょっと落ち着け!あいつはおまえとは相性が悪い!」
「相性だと!?」
「見ろ、あいつは雷を操る、電気製品のおまえじゃヤバいだろ!」
雷と聞いて、さすがのシデンも納得したのか黙り込む。そしてそれはヒビキも同様らしく、手を出しあぐねている。
その2人に、俺は他にも侵入者が居るということを教えた。
「シデンは、常盤さんとバレンシアにこの事を伝えてくれ!」
「む、心得た!」
返事と同時にシデンが廊下をとって返す。
「それからヒビキは、下の誰かの援護を!」
「あいよ!」
返事するや否や、ヒビキが階段を駆け下りる。
「頼んだぞ鏡介!」
最後に、部屋の中でバリアを展開する鏡介に声をかけ、俺も階段を駆け下りた。