表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
03.そして何かが動き出した
31/385

03.そして何かが動き出した その4

「・・・・・・お兄ちゃん、最近、冷たいよぅ」

将仁が出て行ったドアを、指を咥えたままじーっと見つめ、ケイがぽつりともらした。

「いつも、外に行くときは必ずケイのこと連れて行ってくれていたのにぃ」

「小さい子供じゃないんだからそんな駄々こねるんじゃないよ、ケイ。あたしなんてな、将仁と最後につきあったの、もう一ヶ月以上前なんだぞ?」

「きゃ〜〜〜〜〜〜っ、いたいいたいいたいよヒビキお姉ちゃん、そこはアンテナだからダメーっ、離してぇ〜っ」

ケイがヒビキにヘッドロックされて悲鳴をあげる。

「本当に、将仁さんにそっくり。さすがは鏡の擬人化さんでしょう」

「はうぅ、このへんの筋肉のつきかたとかまでそっくりですぅ」

その一方で、テルミとクリンがものめずらしそうに鏡介の体をぺたぺたと触りまくる。

「ちょ、や、やめてくださいよ」

そう言いながらもまんざらでもない様子の鏡介。

「ふえーん、鏡介お兄ちゃん助けてぇ〜」

そこに、ヒビキのヘッドロックを抜けたケイが飛びついてくる。

「改めて見ると、将仁って、あたしより背が低かったんだな」

一人残されたヒビキが、鏡介の横に並んで肩を組み、そして見上げる。

男一人を、女性陣4人がおもちゃにしている感じだ。でも鏡介はちょっと嬉しそうだ。

だが、反撃なんだろうか、その一人を見ながら、こう言った。

「あのさ、その格好、ちょっと、刺激的すぎるよ、クリンさん」

その瞬間、他の3人の視線もクリンに注がれる。

無理もない。なにしろクリンはバスタオルを巻いただけの姿なのだ。昨日のシャツを羽織っただけのそれに劣らない、欲情をそそる格好である。

「うーん、これは、ちょっと困りましたでしょう」

「将仁と同じってことは、やっぱり欲情するだろうしなぁ」

「ちょっとぉ、みんな、お兄ちゃんのことひどく言いすぎだよぉ」

「でも、その格好は本当に刺激的すぎっスよ。俺だって変な気になる」

「そんなことを言ってもぉ、着る服なんてないですよぉ」

そして、5人は考え込んでしまう。

沈黙がその場を包んだ、そのとき。

「ん?」

ケイがはっと顔を上げる。そして。

「電話だっよー、電話だっよー。どうするーのー、でーるうーのー?」

着信音である某大泥棒3代目のテーマに乗せて、歌いだした。

「誰からだよ?」

「弁護士ーのーとーきわーさーん、どうするーのー、でーるのー?」

「弁護士って、なんでだ?将仁さん、何かやったんスか?」

「違います、西園寺という家の、遺産相続者が将仁さんでしょう」

「ねえはやーくー、きーめてーよー、とーきわーさーん、まってるーよー」

ケイが、歌いながら、ちょっとイラついた様子を見せる。

「分かったよ、出ようぜ」

ヒビキが返事すると、ケイが一度頷いた。と同時に、瞳の色が(とび)色から水色に変化する。

「もしもし?将仁さんですか?弁護士の、常盤です」

その瞬間から、ケイの声が変わった

「いえ、将仁さんは学校でしょう」

「ああ、その声はテルミさんですね。どうですか、そちらの様子は?」

「あれ、ケイちゃんの声が変わった?」

「そう、ですねぇ。電話だから、でしょうかぁ」

「あら、新顔さんがいらっしゃるみたいですね」

鏡介とクリンの会話が聞こえたのだろう、電話のむこうの常盤弁護士がそう問いかけてきた。

「あ、ど、どうも、こんにちは、はじめまして。えーと、鏡介といいます」

「はじめましてぇ、クリンですぅ」

「はじめまして、鏡介さん、クリンさん」

そこで、思い出したように、電話の向こうの常盤弁護士が口をはさんだ。

「そうです、皆さん、今、将仁さんの家に居るんですか?」

「ああ、いるよ。擬人化した奴は全員な」

「それは好都合です。今から、そちらにお伺いしてよろしいでしょうか?」

「いいぜ。今から来るのかい?」

それに、ヒビキが答えた。誰にも相談なしで。

「ひ、ヒビキさん!?」

「ちょうど、あたしもあんたに聞きたいことがあったところだ。待ってるよ」

「分かりました。では、さっそくそちらに伺います。それでは失礼します」

「あっ、ちょっと、待ってほしいでしょうっ、もしもし!」

「ちん。切れちゃった・・・・・・」

目の色が(とび)色に戻ったケイが、残念そうに言葉を口にする。

「もう、ヒビキさん、勝手に話を進めないでほしいのでしょう」

ちょっと目を鋭くして、テルミがヒビキを睨みつける。

「ヒビキさん、俺だって聞きたいことがあったんスよ」

鏡介も、ヒビキを同じように睨む。

だが、ヒビキはどこ吹く風といった様子だ。

「心配しなくても、あっちが来るって言っているんだから、待ってればいいだろ?」

「あうぅ、どんな人が来るんでしょうかぁ」

クリンが、ちょっと不安そうな顔をしてみせる、が。

「・・・・・・やっぱり、その格好はまずいんじゃないスか?」

「・・・・・・うん、ケイもそう思う」

鏡介とケイが、バスタオル1枚で正座するクリンの格好を見て、しみじみと言う。

「あうぅ、そんなしみじみ言わないでくださいよぉ」

さすがのクリンも、ちょっとへこんだようだった。

きんこーん。

そんな話をしていると、早くも家の呼び鈴がなった。

どうも、作者です。

先輩擬人化たちにいじりまわされる鏡介くんの図、と思いきやなぜか常盤弁護士まで登場します。

が、次回はそれとシーンが変わって主人公の学校シーンになります。

乞うご期待!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ