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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
13.ついに実力行使
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13.ついに実力行使 その16

「どらああーーーーーーーーッッ!」

そいつは、叫び声を上げながら、マフラーをたなびかせ、もの凄い勢いで走ってくる。

そして、全身を包むのは赤と黒のライダースーツ。

「むぁぁぁぁさぁぁぁぁひぃぃぃぃとぉぉぉぉぉぉ!ぬぁぁぁぁぁぁにがあったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

それが視認できたと思ったら、そいつはすぐに全身が見えるところにまで来ていた。

そして。

「どぅりゃあああああああっ!」

幅跳びでもするかのようにアスファルトを踏み込み、信じられないほど高く飛び上がると、そいつは、某バイクに乗る改造人間よろしく飛び蹴りを繰りだして、硬直していたロボット女に突っ込んで行ったのだ。

「!」

それが命中するか、と思ったとき。ロボット女が、反応を示した。

くるりと振り向くや、両足からジェット噴射らしいものを噴射し、バックジャンプしたのだ。

そして、ライダースーツの女が飛び蹴りを外して着地し、アスファルトにクモの巣状の亀裂を走らせたとき、ロボット女は足だけでなく背中のブースターも噴射させ、周囲に暴風を撒き散らしながら、3mほど上空でホバリングをしていた。

「邪魔が入りました。作戦は中止。撤退します」

空中に浮かんだロボット女が、俺を見下ろしながら、相変わらずの無機質な声でそう言う。

それとほぼ同時に、がしがしがしっという金属的な音と共に、ロボット女の背中から横に何かが広がっていく。

それは、まるで、メタリックな鳥の翼のようだった。

「では、ごきげんよう」

そして、翼を広げきった直後。ロボット女は、無機質な声に似つかわしくないそんな一言を言い残すと、爆音とともに足と背中のジェット?を吹かし、まるで打ち上げたれたロケット花火のようにものすごいスピードで飛び出し、そしてあっというまに夜空に吸い込まれて見えなくなった。

「・・・・・・な、なんだったんだ、今のは」

その姿を見上げたライダースーツの女、ヒビキが、あっけにとられて言葉を漏らす。

「そりゃ、俺のほうが聞きてぇよ」

俺も、それにそう答えるのが精一杯だった。

そして、ふと我に返り、あたりを見回す。

「ふえぇぇ~ん、怖かったよぅ~」

最初に目に付いたのは、そこにへたりこんで泣きじゃくるケイと。

「もう、大丈夫、大丈夫でしょう」

それをやさしく抱きしめてなだめようとしているテルミ。

「アイヤ~、なんかとでもないことになたアル~」

道端に鍋を立て、そこに顎を乗せて夜空を見上げてほうけて座っている紅娘。

「チッ、今度逢ったらとっちめてやっかんなっ」

ロボット女が飛び去った方向を睨んで悪態をついているヒビキ。

そして。

「じょうかあああああああんっ!ぶじかあああああああっ!」

違う声が頭の上から聞こえた。

見上げると、その声の主が、急降下爆撃でもするかのようにまっすぐこっちに向かって飛んでくるところだった。

「上官、これはなんたる有様だ!?」

着陸するなり、その声の主シデンは、燃え盛るワゴン車を指差してわめいた。

「そっちこそ何だよ、遅れて来やがって。空飛んでショートカットできるんだから、あたしより先に着くはずだろ?」

そこに辛らつな口調でヒビキが文句を言う。確かに見たところ、多少は疲れてはいるようだが、今のシデンの降り方は、墜落のそれとは思えない。

「仕方があるまい!怪しい人影を見かけたのでその相手をしていたのだ!」

売り言葉に買い言葉、でもないだろうが、シデンが声を張り上げる。

「あん?怪しい人影だぁ?そんなのさっき飛んでったじゃねーか」

「我が言っているのはそんなワケの判らぬ者ではない!そこに、黒ずくめの怪しい輩がおったのだ!」

そうシデンが吠え立てて、ちょっと離れたところに立つ雑居ビルの上を指差す。

なんでも、屋上に、ライフルを構えた黒い人影がいたんだそうだ。あからさまに怪しかったため、頭上から奇襲をかけて捕まえようとしたらしい。

そして奇襲には成功したらしいが、その全身黒タイツの怪しい人影は、ライフルをまるで生きているかのように操って、シデンの手業をきれいにさばいて見せたらしい。

「一度は取り押さえたのだ。だが、油断から、逃亡を許してしまったのだ」

そう言うシデンは、本当に悔しそうに見えた。ちなみにその全身タイツは、ビルの中に逃げ込んで鍵をかけてしまったので、それ以上は追えなかったらしい。

「ん、まあとにかく、撃たれたりしないで、良かった」

俺の口から出た言葉は、そんなもんだった。銃火器を目の前にしてびびらないシデンの胆力は相当なものだが、それでも銃口を向けられて引き金を引かれたら一巻の終わりだ。

いかに人間離れした連中だからといっても、無茶はしてほしくない。

「無茶すんじゃないぞ」

そして頭をなでてやると、シデンは真っ赤になって硬直した。

その時だ。

遠くから、サイレンが聞こえた。

「ヤバいっ!」

その音に我に返り、そして、車が燃えていることを思い出した。今まで気にしていなかったが、これは十分に火事だ。

「みんな、ずらかるぞ!」

俺は、そこにいるみんなに声をかけた。

警察沙汰にはなりたくない。俺だけならいいが、ここまで来てケイたちみんなを巻き込むわけにはいかない。そして多分、みんなは俺が捕まるのを望まないだろう。

中華鍋&お玉に戻った紅娘をシデンに背負わせて空から戻らせ、俺はバイクに戻ったヒビキにまたがり(考えてみたら、ヒビキに乗るのは、擬人化させて以来これがはじめてだった)、ケイをポケットに入れて、テルミは人の姿のままで後ろに乗せて帰ることにした。

テルミは元が60インチもあるプラズマテレビなので、モノの姿にしたら運ぶのが大変だ。かといって人の姿の時は万能だけど身体能力は普通の女性とそんなに変わらないから、歩いて帰るととんでもない時間がかかる、ということでこんな形になった。

申し訳なさそうなテルミと、明らかに羨ましそうなケイが、ちょっと印象的だった。

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