13.ついに実力行使 その3
きーんこーんかーんこーん。
昼休みになると、今まで眠そうにしていた連中が一斉に動き出す。
ついでに俺も動き出す。と言っても俺の場合は昼飯を食うためではない。
うちに帰るためだ。と言っても、すぐに常盤さんといっしょに役場へいくんだが。
ちなみに、役所に行ってやることを正直に言ったところ、先生はぱぁっと表情を明るくして、「早く行ってきなさい!」と俺の背中を押したぐらいだった。
「おいマサ、帰るならかわりに誰か呼んでくれよ」
「お前ら、うちのを出張ヘ○スかなにかと勘違いしてんだろ」
「いいじゃんか、ちゃんと相手するから」
「お前らに任せられるか、アホ」
帰る支度をする俺に、クラスの連中が声をかけてくる。
まあ、男連中はほとんどがただのにぎやかしだから、言うことは無視してもいい。
無視できないのは。
「ねえ真田君。紅娘さんは、今日は来てくれないのかしら?」
という委員長の言葉だ。
なんでも、紅娘のやつ、昨日、中国菓子のサンプルをあんなに色々作っていったくせに、そのレシピ的なものを一切残していかなかったらしいのだ。
クラス委員長として出し物を成功させるには、この中国菓子が必要不可欠だ、と力説してくる委員長の姿は、ちょっと引いてしまうぐらいに迫力がある。
だが、そうは言っても今日は、ケイ以外誰も連れてきていないし、来いとも言っていないから、来てもらうには今から呼ぶしかない。まあ、来いといえば多分大喜びで来るんだろうが、外出とかしていたら連絡がつかないから呼ぶこともできない。
「悪い、あいつ、携帯とか持ってないんだ」
「あ・・・・・・そうなの?」
「ああ、えーと、あいつ、中国から来てそんなに経っていないからさ」
「そう・・・・・・」
すると、委員長は見て判るほどにしょんぼりしてしまった。
それなのでつい、紅娘の都合も聞かず、明日は来てもらうよ、と言ってしまったのだった。