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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
12.忘れていた学校行事
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12.忘れていた学校行事 その17

「どういうことですか?」

俺は、向かいに座る常盤さんにそう聞き返していた。

「ですから、明日の午後は、学校を休んで欲しいのです」

常盤さんは、平然とそう答える。

なんでも、俺が西園寺の遺産を継承するにあたり、「本人」が役所役場に出頭してほしいそうだ。

それにしても、学校を休むか。

「何か、問題でも?確か、午後は授業は無いと聞いていますが」

返事が出来ないでいる俺が気になったのか、常盤さんが俺にそう聞いてくる。

「いや、授業じゃなくて、学園祭の準備があるんですよ。で、クラスの仲間から「サボリだ」とか言われそうで」

「あら、そうですか?学校のほうには許可を取ってあるので、問題ないと思ったのですけれど」

「・・・・・・いつのまに」

「私は、1分1秒でも早くこの役目を終わらせ、西園寺の基盤を確固たるものにしたいのです。今の私は、そのためだけに存在している、と言っても過言ではありません」

そして、常盤さんは俺の目をじっと見つめてくる。すごくマジな目だ。まあ、常盤さんももとをただせば西園寺の家に伝わる懐中時計、つまりその遺産に含まれるのであり、遺産の扱いは今後の自分の扱いにも繋がるわけだから、マジにもなるわな。

一方の俺は、それにNOと言えるだけの理由が無い。

「役所に行って、何するんですか?」

とりあえず、具体的に聞いてみることにする。

「まずは、遺産相続のための書類を、いくつか書いていただきます」

すると、常盤さんはまるで用意していたかのように流暢に説明をしだした。

さすが、人間じゃないけど人間の法律に詳しい弁護士だ。俺はその話についていくので精一杯だ。こんなにめんどくさいんだったら、全部任せてしまいたいと思う。

だが、その中でも聞き捨てならない言葉があった。

「離縁、ですか!?」

そう。俺が西園寺を名乗るためには、真田の家を出なきゃならないらしいのだ。芸名ならともかく、2つの苗字を持つのはやっぱりNGらしい。そして、詳しいことは良く判らなかったが、真田家の養子として生きてきた俺の場合、苗字を戻す場合は離縁扱いになるんだそうだ。

まあ離縁と言っても交流がなくなるわけではないし、実際にやるのは何ヶ月か先でもいいみたいなので、あまり気にすることはない、と常盤さんは説明してくれた。

でも、6歳のころから今まで10年ちょっと親しんできた、真田という苗字と別れなければならないことには、少し寂しさを感じた。

そして同時に、妙なことも考えてしまった。

「結婚する女の人ってのは、こんな気持ちになるのかね」

なにしろ、苗字が変わるってのでもっとも一般的なのは、女の人が嫁ぐ時もしくは離婚するときだと俺だって思うもん。まあ男の場合も婿養子ってーパターンがあるが、俺の場合はそのきっかけになるパートナーもいないし、それにそうなると西園寺って名がなくなるから常盤さんもうんと言わないと思うし。

そしてそこまで考えたとき、俺はその常盤さんが、意地悪な継母のように「子供はいつできるの」とかいう姿を想像してしまい、ちょっと苦笑してしまった。

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