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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
12.忘れていた学校行事
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12.忘れていた学校行事 その16

暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、7時を過ぎてうちに着いたころには、あたりはすっかり夜になっていた。

「ただいまー」

俺が家のドアを開けて、そう言った直後だ。

2階から、どどどどどど、という激しい足音が降りてきた。

こんなふうに足を踏み鳴らして走るのは、大抵なら俺かヒビキ、もしくはシデンぐらいだが、今はどっちも後ろにいる。ってことは、誰だ?鏡介あたりかな?

と思いながら見ていると、その正体である黒い塊がもの凄い勢いで走って来て、上がりかまちの寸前で急に全身でブレーキをかけて停止した。

「くっ、クリンさんっ!」

その黒マントのメイドさんは、全速力で突っ走って乱れたメイド服と黒マントを手早く整え、ずり落ちかけた眼鏡を直すと、その眼鏡のむこうの目を三角にし、俺と一緒だったジャージ姿で髪の白い女に向かって金切り声を上げた。

普段は絶対にそんな物言いしないような奴だったので、正直驚いた。

「て、テルミ、一体どうしたんだ!?」

「あ、将仁さん、お帰りなさいませ」

俺が声をかけると、一瞬だけいつもの真田家メイドマスター・テルミに戻ったが、すぐに視線をクリンに向ける。

「あなたっ、誰にも断り無く勝手に将仁さんの学校にいくなんて、一体どういうつもりなんでしょうっ!」

「あぅ、それはぁ、そのぉ」

「言い訳は結構でしょうっ!さっさと着替えて、仕事に就くのでしょうっ!」

そう言うなり、テルミはクリンの襟首をむんずと掴んだ。

「私たちは普通と違うのですから、軽率な行動は慎むようにと、何度も言っているでしょうっ」

「お、おい、ちょっとテルミ」

「あ、将仁さん。お疲れ様でしょう。この子が、なにかご迷惑をお掛けしなかったでしょうか?」

「あ、いや、別に」

テルミは、声をかけた俺ににっこりと笑顔を向ける。だが、その目は笑っていない。というか明らかに怒っている。やっぱり、いつも2人でやっている仕事を一人でやらなきゃならなかったからかな。

「さあ、行きましょう。まだまだ仕事はあるのでしょう」

「あああああぁぁぁれええええぇぇぇ」

そして、大魔神のようにのっしのっしと歩いて家の奥へと歩いていくテルミに襟首を引っ張られ、クリンが情けない悲鳴をあげて消えていく。

「紅娘」

入れ替わりに、こんどはレイカが玄関に顔を出した。

「夕食の用意がまだ完了していないから手伝って欲しいのだけれど、いいかしら」

今度は紅娘をご指名か。にしても、レイカの手際なら、一人でも十分対応できるんじゃないか?と思ったら。

「ヒビキさんが外出したから、品物の運送を代行にお願いしたら、届くのに時間がかかったのよ」

どうやら、口に出ていたらしい。レイカにそう言われてしまった。

「ワタシは無問題アル。何すれば良いアル?」

「今日はジャガイモとタマネギが安かったから少し多めに買って来たの。それメインで、2品ほど考えてもらえるかしら」

「あー、了解アル。コンロ借りて良いアルか?」

「片方だけならいいわ。煮物を作っているから」

「ん、ひとつあれば十分アル。謝謝ネ~!」

紅娘はそう返事するが早いか、手早く靴を脱いで上がりかまちを駆け上る。

「それじゃそゆコトアルからちょと失礼するアル~」

そして、一度こっちを見て口早にそういい残すと、レイカと一緒にキッチンに消えていく。

「Master!」

それからまた入れ替わりに、今度はでかい胸を揺らしながら、金髪碧眼の丸眼鏡が顔を出した。

「ちょーとMasterに用があるデース」

そして、彼女はなぜか俺の右にすっと入り込むと、なぜか俺の腕を自分の腕に絡めてくる。

むにゅ。

すると、当然彼女の胸が腕に当たる。なにしろでかいからな。

それに気付いているのかどうなのか。彼女、バレンシアは俺を見上げるとにっこりと笑う。

うーん、こいつの場合、天然なのか、計算してやってるのかが判らないんだよな。この所作も何を意図しているのか考えてしまう。

「あぁーっ!バレンシアちゃんずるいっ!」

そしてそれに最初に反応したのが、ケイだった。すかさずバレンシアと俺の間に割り込むと引き離しにかかる。

「貴様、不意打ちとは卑怯だぞ!」

そして、シデンがなぜか俺の反対側の腕を抱えて引き寄せる。って、お前がやってることも結局は同じじゃないのか。

そして、そこに居合わせているヒビキは、やれやれといった様子でそれを見ている。助けるつもりはないってことか。

「Hey、don’t misunderstanding(誤解するな)デース!Masterにbusiness(用事)があるのはMiss Tokiwaデース!ミーは、Masterをcallしにcomeしただけデース!」

「ならば腕を取る必要はあるまいが!上官は馬鹿ではないのだからな!」

「必要はあるデース!Masterがbecome happy(喜ぶ)デース!」

「お兄ちゃんんんんんっ!?」

「いってえええええ!こらケイつねるんじゃねええっ!」

お前ら、俺をなんだと思っているんだ。時々忘れそうになるが、俺はお前らの所有者じゃねえか、せめてもう少し丁寧に扱ってくれ。

「ほら、そのへんにしときな」

その時、その場を収めてくれたのは、さっきまで傍観していたヒビキだった。

「あ~あ、全く世話が焼けるねえ」

そういいながら、ヒビキはシデンの間に入って俺から彼女を引き離す。

「お前らが将仁の所有を主張してどうすんだよ」

かと思うと、今度は俺とバレンシアを引き離した。ちょっと待て、そこは引き剥がさないでくれと言いたいが、ケイが見てる前じゃ言えない。

「ほれ、将仁。とっとと行ってこい」

「え、あ、じゃ」

なんかよく判らないうちに送り出された俺は、ぽかんとしている3人に声をかける。

「Hey!Master!ミーとtogether(一緒)するデース!」

「待てぇいっ!よく考えてみたら、貴様が上官に付き添う理由は無いではないか!」

「Hey、Missシデーン!ミーをrelease(離す)するデース!」

「お兄ちゃん行っちゃやだーっ!」

「こら、お前が行ったら収拾がつかないだろ」

「うえーんっ!」

確かに収拾がつかなくなりそうなので、後のことは二人に任せて俺はさっさと2階に上がることにした。

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