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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
12.忘れていた学校行事
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12.忘れていた学校行事 その11

なぜか俺を脱がそうとする2人を何とか引っぺがし、自分の作業を始める。

しかしどうもやりにくい。なんというか、俺一人が仲間はずれにされている感じだ。それはまあやっぱり、さっきのケイとクリンがやってくれやがったアレのせいなんだろうな。

ちょっと前まではお前らと同じだったわけだし、本当は今でも同じなんだが、そう言ったところで信じてもらえるとも思えないし、信じたら信じたでまたろくなことにならないのが目に見えている。うん。仕方が無い、今日は黙って、嫌われ者になろう。曹操は三国志では嫌われ者なんだ。

そして、その原因を作ったケイとクリンも、今は俺から離れ、衣装作りのグループと一緒に仲良く衣装作りをしている。

「仲間はずれでもなんでも、仕事だけはしなきゃな」

諦めて、さっき買ってきた角材の長さを測りはじめる。教室のロッカーや厨房を隠すために立てる壁の枠だ。

案の定、だーれも手伝ってくれない。なんか泣けてきたぞこのヤロウ。

そんなことを思いながら、角材にのこぎりを当ててぎっこぎっこと挽きはじめた。そのときだ。

視界の端に、何か見覚えのある靴のつま先が現れた。

「一人で作業か?」

そして頭の上から聞き覚えのある偉そうな声がした。

顔をあげると、その声の主である深緑の女袴を着た女が、偉そうにふんぞりがえって立っていた。

「お前、ホントに来たんだな」

「なんだその迷惑そうな物言いは。孤立無援のところに援軍として参上してやったのだ。感謝されても良いぐらいだぞ」

その女、シデンは、俺の前にしゃがみこむと角材に手を添える。

「これを切るのであろう。手伝ってやるぞ、上官」

そして俺の顔をみてにっと笑った。

が、その直後。いきなりシデンが、首を縦に振りやがった。それに合わせて、頭のてっぺんで束ねられた銀色の髪の毛が俺の顔に叩きつけられる。

「ぶは!?」

「人のことほったらかして、勝手に話を進めんじゃないの」

そして、聞き覚えのある、しかしいるはずのない女の声がした。

「きっ、貴様、何をするのだ!」

頭を上げたシデンが、その声のほうへ食ってかかる。

はたしてそこには。赤と黒のライダースーツに身を固め、長い銀色のマフラーに色の濃いサンバイザーをした女が立っていた。

ヒビキだ。シデンがつれて来たんだろうか。

「えっらそうに。おめぇこそ勝手に先行きやがって、危うく迷うところだったじゃねぇか」

「勝手は貴様であろう、招きもせぬのに勝手について来たのではないか!」

いや、どうもそうでもないようだ。

しかしそれにしてもクリンといい紅娘といいこいつらといい、なんで学校に来たがるんだろう。うちにいるのがおもしろくないのか、それとも学校に興味があるのか。

そう考えると、ここに来ていないテルミ、レイカ、バレンシア、ついでにちょっと方向性が違うが魅尾も、本当は学校に興味があるのかもしれないな。

よし、学園祭になったら、みんなを招待しよう。モノたちも喜ぶしうちのクラス連中も喜ぶ。一石二鳥ってやつだ。

なんてなことを考えていると、さっきまで無視を決め込んでやがったクラスの男子が、俺に話しかけてきた。

「あのライダースーツの人、知り合い?」

「ん、あ、まあな」

知り合いかと聞かれたら、まあNOとは言えないだろう。

「お前ら、こいつの知り合いかい?」

と、突然誰かが俺の首に手を回して来た。

ヒビキだった。そして俺をヘッドロックすると、そのまま俺を引っ張り立ち上がりやがった。

「いててててっ、こら待てっ、俺ノコギリもってんだぞっ!」

「おいヒビキっ!貴様、上官に何をするのだ!」

そこにシデンが飛びつくと、俺の腕を掴んで引っ張る。・・・・・・ん?

「いでええええええ!」

その手に激痛が走り、ノコギリを落としてしまった。

「うがああああああ!てめえらあああああ!なにしやがるううううううううう!」

思わず叫んでしまった。学校でバイクとラジコン飛行機に殺されるなんて、絶対に嫌だぞ。

そして、開放されると同時に俺は床にうつぶせに落とされた。

頭を上げると、俺を痛めつけていたヒビキとシデンの二人が、少し心配そうに俺を見ている。

「ててて、このてめぇらっ!」

立ち上がると、俺はその2人に叫んでいた。

「てめえら、俺にケガさせにきたのか、それとも邪魔しにきたのかあっ!だったら帰れっ!帰りやがれええぇぇぇ!」

そして俺は、その二人に怒鳴っていた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・・」

今まで出したことがないような大声を出したせいか、なんか息が切れてしまった。頭に血が上って少しくらくらする。

少し冷静になったところで、あたりが静かなのに気付いて顔をあげる。

クラス中が、俺を見て固まっていた。そして、ヒビキとシデンが、少し怯えたような顔でこっちを見ている。

「・・・・・・あ、すまん、ちょっと言い過ぎた」

この我が家武闘派ツートップのそんな顔を見たら、自分が大人気ない気がしてしまい、俺は2人に、頭を下げていた。

ヒビキは初めてなんだし、シデンだってまだ2回目だ。多少興奮して舞い上がっても、しょうがないだろう。

「頭を上げてくれ、上官。此度のことは、我等にも落ち度があったのだ」

「こっちこそ悪かったよ、変にはしゃいじまってさ」

すると、2人のほうも謝ってきた。

「なあ将仁。これ、どうすりゃいいんだい?」

そしてヒビキが、床に転がっていた角材のひとつをひょいと持ち上げる。

「ここに、線が入っているのが見えるであろう。まずは、このノコギリで、その線に合わせて切れば良いのだ」

そこに、ノコギリを拾ったシデンが指示をする。

「そうだな、上官よ」

「ん、ああ、まあ、そうだな」

その2人の様子を見て、他の連中も落ち着いたのを感じたのだろう、のそのそと自分の仕事に戻っていった。

「そういえばお前ら、こっちを手伝うのか?」

「うむ、先刻は上官に迷惑を掛けてしまったことだし」

「それに、あたしゃああいう細かい仕事よかこっちのほうが性に合ってるからさ」

「だいたい、我等が援護せねば、上官は孤立無援ではないか。来てしまった援軍は素直に受け入れたほうが良かろう?」

どうやら、さっき帰れと言ったばかりだが、こいつらにその選択肢はないらしい。

まあ、せっかくの貴重な労働力がやる気になっているのだ、使わない手はない。特にヒビキのパワーは、俺らの仕事をする場合に重宝すること間違いなしだ。

「じゃあ、俺らの手伝いを頼むわ」

「オッケー、頼まれたぜ」

「では上官。具体的に何をすれば良いか、指示を頂けないか」

そうお願いすると、2人はぱっと明るい表情になった。

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