12.忘れていた学校行事 その8
その後、生徒指導質に連れて行かれた俺達は、昼休みが終わると同時に解放された。
指導室では、クリンの正体やら何やら色々聞かれたが、途中からそれとは関係ないはずの胸の話になってしまい、そこでクリンが「揉んでもらっている」なんてシャレにならない冗談を言ったもんだから先生は取り乱すわケイまで噛み付いてくるわで、シデンのときよりも疲れてしまった。
そしてなにはともあれ、先生から開放された俺達は教室に戻ってきた。本当は指導室でクリンもケイもモノに戻して「帰った」コトにしようかとも思ったのだが、ちょっと思うところがあったので2人ともそのままにしておいた。
案の定、教室では2人を待っていた奴らに拍手で迎えられた。
しかし、俺はこの2人を、うちのクラスメイトを喜ばせるためにつれて来たのではない。
「お前ら、うちに帰って、することはあるか?」
教室で、俺は2人に聞いてみた。
「えっ、ううん、今日はべつに」
「私も、今日は特にないですぅ」
案の定、2人ともそんな答えを返してくる。一応うちのメイドであるクリンが「することがない」というのはちょっとまずいような気もするが、まあもう一人のメイド、テルミが非常に優秀だから大丈夫だろう。色々と苦労しているかもしれないが。
「だったら、今日は午後から学園祭の準備で休講になるから、準備を手伝ってくれ」
これが、2人をそのまま連れてきた一番の目的だ。
うちの学園祭は、伝統的に2年生が中心になって行う。この時期になると、3年生は受験に向けての追い込みに入らなければならなくなるからだ。
だが、盛り上がる理由は他にもある。実は、うちの学園祭は、出し物の出来によって賞金がでるのだ。それも名目上ではなく、現金がだ。もので釣るというのは不健全のような気もしないでもないが、そのおかげ?でうちの学園祭は市内のほかの高校のそれより盛り上がりが凄く、人気があるのだ。
回りから期待されれば頑張ってしまうのは人の性、しかしいかんせん高校生だからできる事には限界がある。そのため、いつからかうちの学園祭は、無償であればその準備に外部からの応援を呼んでも良いことが暗黙のルールになっているのだ。
そしてうちのクラスも、その例に漏れなく「賞金目指してがんばるぞー!」状態なのだ。
そういう考えの下、ケイとクリンに聞いてみると、二人の表情がぱっと明るくなった。
「いいの!?」
「がんばりますぅ!」
ケイとクリンは、嬉しそうに返事をすると、そのまま女子の輪に加わっていった。
それを見届けた俺は、やっと自分の仕事に取り掛かることにした。