12.忘れていた学校行事 その2
「おっはよーお兄ちゃん♪」
階段を下りると、引っ越してからすっかり早起きになったケイが飛び出してきた。
「あれ?お兄ちゃん、まだ着替えてないの?」
そして俺の格好を見てちょっと驚いたように言う。
俺はまだ寝間着のままだった。だって今、俺の部屋では、クリンとシデンが取っ組み合いをしている最中だからだ。特にクリンは危険だ。だから避難してきた。
そのことを話す(さすがにズボン脱がされたことは伏せたが)と、ケイは羨ましいような変な表情を見せた。
「クリンちゃん、一体何をするつもりだったのかなぁ?」
そしてケイは首を傾げる。うん、ケイにはまだ早い。もし仮にクリンがしようとしたことをケイがしたら、誰がどこからどう見ても犯罪だ。ちなみにその時罰されるのは間違いなく俺だ。
「やっぱり、“よばい”なのかな?」
「ぶっ、おま、なんでそんなこと知ってる!?」
「ネットで調べたんだもんっ」
「こら、そんなこと調べるんじゃありません。すぐ忘れなさい」
ケイが不穏なことを口にしたので、慌てて止めさせる。
全くこいつは、知ってほしくないことばかり覚えやがってからに。
「早上好、おはよございますアル!」
そこに鍋を背負った中華娘、紅娘が顔を出した。
「アイヤー、将仁サンその格好でガッコ行くアル?」
そして同じようなツッコミを入れてくる。
「アイヤー、クリンサン余計なコトしてるアルな~」
そこから先の突っ込み内容はさすがに違ったが、呆れているのは同じだった。まあ、我が家で(関心があるかどうかは別として)そういう行為に及ぶのはクリンだけだからな。特に同じメイド服のテルミなんかは拒否反応みたいなものまで起こすし。
「おはようござい・・・・・・将仁さん、まだ着替えていないのでしょう?」
「Master、dress upはyour roomでするデース」
「その格好で学校へ行くつもり?」
そして、それからもうちのモノたちに会うたびにそうツッこまれたのだった。