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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
11.そしてみんな動かなくなった
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11.そしてみんな動かなくなった その17

「・・・・・・ん・・・・・・?」

どのぐらい時間が経ったのだろうか。

気がつくと、俺は屋内に敷かれた布団の上に横たわっていた。

「お兄ちゃぁんっ!」

「気がついたのですねぇ!?」

そこに、聞き覚えがある声が聞こえ、そして見覚えのある顔が見えた。

ケイと、クリンだった。

・・・・・・あれ?なんでこいつらが人の姿になっているんだ?確かまだ、北の水気が残っているはず、それに、俺ってさっきまで外にいたよな?

「お前たち、なんで?」

つい、そんな言葉が口に出た。

「わかんないけど、気がついたら、動けるようになってたの」

なんでも、クリンやシデンが喋れるようになって、俺が顔を出した後、しばらくして人の姿になったんだそうだ。そして、その時はほとんど動けなかったのだが、その後しばらくしたら不意に動けるようになったらしい。多分、人の姿になったのは3つ目を消した時点、動けるようになったのは4つ目を消した時点なんだろう。

「将仁さんのことが気になりましてぇ、外に行ったんですよぅ。そうしたらですねぇ」

俺が庭でぶっ倒れていて、その横でおろおろしている魅尾がいたんだそうだ。

「びっくりしましたよぉ。将仁さん、キズだらけなんですものぉ」

「お兄ちゃんのこと、みんなでここまで運んできたんだよ?」

みんな?ああそうか。みんな、人の姿に戻れたんだっけ。

そういえば、他の連中はどうしたんだ?

「終わったぞー」

「おい、魅尾。本当に終わりなのだろうな」

「わらわがウソを言うわけが無かろう」

「にしても、人間の筋力で仕事するのって、意外と大変なんだねぇ」

その時、外のほうから聞き覚えのある声が聞こえた。あの声は、鏡介、シデン、魅尾、それからヒビキか?

何が終わったのか聞こうとして体を起こす。体中色々なところが痛いが、動けないほどではない。

「あっ、お兄ちゃんまだ動いちゃダメッ!」

すると、ケイが飛びついてきて俺を寝かせようとする。

大丈夫だと言おうとして、ふと自分の体に目が行って、そしてびっくりしてしまった。

包帯だらけだったのだ。まるでミイラだ。そして、着ていたはずのシャツもジャージもない。

まさかと思って、下半身にかかった夏掛けをめくると、さすがにトランクスはそのままだったが、ジャージは跡形も無かった。その代わりに、そこにも包帯が巻かれていた。

ってことは・・・・・・むぅ。凄く恥ずかしい光景が連想される。

「あっ、将仁さん、目がさめたのでしょう」

そこに、何かを抱きかかえたテルミが入ってきた。

「上官、生きていたか!」

「うむ、なんとも無様な姿じゃの」

「ま、うちらの頭がそう簡単にくたばるたぁ思ってなかったけどねぇ」

そこにどやどやと他の連中が入ってきて、6畳ほどしかない室内は一気にせまくなる。

「ええと。あなたたちがそこで固まっていたら、私が入れないのだけれど」

「Master、コンナコトモアロウカト、goodなapplicationをresearchしたデース!」

「将仁サン、滋養強壮な羹汤作たアル、飲むヨロシね!」

そこにさらにモノたちが入ってきたので、余計に部屋が狭くなった。

でも、俺はとても嬉しかった。

みんながいる。そのことが、どれだけ俺にとって大切なことなのか。改めて、分かったから。

そして、俺はあることを思い出した。

「さっき、終わったって言ってたけど、何やってたんだ?」

さっき、外から帰って来たときに鏡介が言っていたセリフだ。

「ああ、最後の祭文を処分して来たんスよ」

鏡介が、少し泥に汚れた顔でそう答える。

魅尾曰く、家の北にあるはずの水の祭文。この家に何者かが仕掛けた、あやかしの力を遮る陣を形成する、最後の点。

ってことは、こいつらは、陣が完全に消えなくても、元に戻ったってことか?

だが、よく話を聞いてみると、完全には元に戻っていなかったらしい。

「いやぁ参ったよ。動けるようにゃなってたけど、力が出なくってさぁ」

「物を持ち上げられないヒビキさん、初めて見たッスよ」

最後に残った水の祭文は、俺が予想したとおりドラム缶の上にたまった水の上に、水面に墨で描いたような字だけが浮かんでいたそうだ。見てみたかったもんだ。

水気には土気、ということで、最初はそのドラム缶をひっくり返し、地面に流してしまおうと思ったのだが、大型バイクを片手で持ち上げるヒビキの力をもってしても微動だにしなかったらしい。

そこで、近くの地面を掘り返し、そこから出た土をドラム缶の上にある水たまりに被せるという方法を取ることにしたのだが、そこで「いつもの力が出ない」ことに気がついたらしい。

そしてその時は、鏡介のバリアやビームも出せず、シデンも空を飛ぶことができないという、ごく普通の人間と変わらない能力しか出せなかったのだそうだ。

「でもまあやるしかないからやったんだけどさ。あんまり気持ちのいいもんじゃなかったねぇ」

これはヒビキの弁だ。なんでも、その水たまりに土をぶっかけると、そこに溜まっていたものとは比較にならないほどの量の水が湧き出し、泥水となってあふれだしたのだそうだ。

この現象に、作業していた連中は驚いたそうだ。当然だ、俺だって水溜りからそこにある以上の水が溢れ出したら驚く。

だが、それでもしつこく土を被せていったら、泥水の量は徐々に少なくなり、やがて溢れなくなったのだそうだ。

そしてさらに土を被せていくと、ぼふっという鈍い破裂音がして、そして完全に反応しなくなった。

「終わったかな?と思ってドラム缶に手をかけてみたら、さっきはぴくりとも動かせなかったドラム缶が軽くなっちまってさ。ついでだから、ひっくり返して土を落としてきたんだよ」

それはつまり、うちのモノたちが完全に復活した、ということだ。これで、すべて元通りなのだ。

特殊な能力がない、「普通の人間」なみんなと、一度生活してみたかったが、今となってはそれは無理だし、それにうちのモノたちは、そのことを喜ばないような気がするので、口にするのはやめておいた。

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