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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
11.そしてみんな動かなくなった
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11.そしてみんな動かなくなった その12

「む、あったぞ将仁。ここじゃ」

家の西、敷地の入り口にある門のあたりで、魅尾が声を上げる。

魅尾は、入り口の横にある郵便受けの下にしゃがみこみ、そこから上を見上げている。

魅尾が見ているであろう郵便受けの下を覗き込むと、さっき家の中にあったものと似たような、漢字みたいな新しい文字みたいな模様が、今度は白い染料で描かれていた。

「これって、さっき言ってた、西にある金気の祭文って奴か?」

「うむ、御主も案外理解が早い喃」

そう言う魅尾の顔は、ちょっと得意そうだ。

家の中にはもうないだろう、という推測のもと、俺達は家の外に出て調査を続行していた。

魅尾曰く、俺の家に張られた陣は、「五行説」という考え方に基づいて作られているらしい。その考え方によると、さっき俺達が潰した「土気」は「中央」にあたり、残りは「東に木気」「南に火気」「西に金気」「北に水気」となるんだそうだ。

そして、西にある金気、つまり金属のものを探しに来たところ、郵便受けがビンゴだったというわけだ。確かに家の西にあって、金属製だもんな。

郵便受けの下にあるその模様を、ちょっと手で触ってみる。さっき家の中で見た黄色い模様のときは、すりこぎでは触ったが、直接は触っていないので、どんな感じになるのかちょっと気になったからだ。

そして、期待に外れて、そこには変な感触はなかった。ごく普通の、ブリキの手触りだけだ。

「ホントにこれなのかねぇ?」

「何も感じぬのは御主が鈍いだけじゃ。それより、準備はよいか」

「へいへい」

言いながら、俺は古新聞を取り出すと、棒状に丸めて魅尾に渡す。

そして、ちょっと緊張した面持ちで剣道の竹刀を持つようにして構える魅尾に、改めて声をかける。

「怖くないか?」

「ば、馬鹿にするな、わらわを何じゃと思っておる」

「代わろうか?」

「御主では呪がかけられぬであろ、い、いいから、早くせい」

「へいへい、んじゃ、とその前に」

マッチを擦ろうとしたところでふと思い出し、水を入れたバケツを持ってくる。

なにしろ、今度は火を使う。金気は火気に打ち滅ぼされるので、新聞紙に点けた火であの字をあぶるらしいのだ。

さっきのアレから考えると、郵便受けがひどいことになりそうだが、それ以上に火事とかになるのが怖い。

「じゃ、点けるぞ」

マッチを箱から取り出し、擦る。シュッといういう音と共に、マッチの先にオレンジ色の炎が灯る。

それを、魅尾が両手で構える丸めた新聞紙の先に移すと、いとも簡単に火が燃え移った。

魅尾は、その火を見つめながらぶつぶつと何かつぶやく。これは呪いに対抗するため、こちらからぶつける「気」を高めているんだそうだ。そして、火は木と違って発散しやすいので、終わるまで何かやり続けなきゃならない、と魅尾が自分で言っていた。

「よ、よし、では参るぞ」

そして、覚悟を決めるようにそう言うと、火が点いた新聞紙を高々と掲げ、郵便受けに近づく。

そして、その火が郵便受けの下、あの白い文字に触れた、その時。

ババババババババッ!

突然、まるでそこをに火薬が何かが仕掛けられていたかのように猛烈に火花が飛び散り、爆竹をほおりこんだようなもの凄い音がした。

「うわわわわわわっ!?」

「ぬううううっ!」

しかも、火の粉がそこら中に飛び散っている。なんていうか、溶鉱炉のそばか溶接工事の現場が、こんな感じなんじゃないだろうか。

こりゃ、火事になるかもな、なんてことを思いながらも、魅尾にかかりそうな火の粉を振り払っていた、その時。

ボゴンッ!というひときわ大きな、何かが破裂したような音と共に、爆風が飛んできた。

「うわっ!?」

思わず、魅尾を抱えてひっくり返ってしまった。

そして、静かになったので、郵便受けのほうを見る。

そこには、さっきまで銀色に光っていた郵便受けが、煤まみれで真っ黒になった上に、さっき字が書かれていた底面にぽっかりと穴が開いた、見るも無残な姿になっていた。

「あっちゃー・・・・・・」

「う、うーん、うまくいったか、の?」

念のためその郵便受けを見ると、確かに文字は消えていた。正確に言うと、その文字があったあたりがごっそりとなくなっていた。

だが。

「あ、こら!」

さっき使った新聞紙が、火が点いたまま芝生の上に転がっていたので、あわててバケツの水をぶっかけて消したのだった。

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