10.なにがお嬢様だ その25
「う~、なんか今日はいつも以上に色々あったなぁ」
みんなで食卓を囲んで夕食を食べていると、そんな言葉が口をついて出てきた。
今日は、一番の厄介ごとだと思っていたお嬢様のパーティーを鏡介に任せたから少しは楽が出来るかと思ったが、バレンシアの騒ぎで逆に疲れてしまった。ぶつけることこそ無かったが、また顔が腫れてきたのかビリビリする。
「うぅ、very very sorryデース、everyoneにtroubleかけてしまったデース」
そしてその、一番手近な原因を作ってくれたバレンシアだが、さすがに大人しくしている。
とりあえず、なんであんなことになったのか、バレンシアに聞いてみた。
「Hmm、ミーもremember not well(よく覚えていない)なのデス。But, beforeミーのmemoryがlostする時、ミーはKonoeのhost computerにlinkしたデス」
すると、バレンシアはこんなことを言い出した。
なんでも、最初は直接関係ないところから調べていたのだが、大した情報が得られなかったため、更なる情報を得るために危険を承知で近衛の家のホストコンピュータに入り込んだらしい。
つまり、バレンシアは、近衛の家のコンピューターにハッキングを仕掛けたのだ。
そして、各種セキュリティを潜り抜け、入り込むことには成功したのだが、いざ調べようとしたとたんに攻撃されてしまい、そこから先の記憶がないらしい。
ここは、よくできたなと誉めるべきなのか、無茶やったもんだと呆れるべきなのか。
「Next time は no problemデース!ミーにsame typeなattackはnot workデース!」
いずれにしろ、攻撃に耐えられなかったのがよほど悔しかったらしく、バレンシアはそう叫びながら箸を振り回す。飯を食ってる最中にそんなことをするのは止めて欲しいんだが。
と。その時。
ぶ~ん。
どこからか、ハエの羽音が聞こえてきた。レイカと紅娘の料理の匂いにでも誘われたのだろうか。
正直、メシ時には聞きたくない音だな~と思った時。
「Shut up!」
バレンシアの声がした。それだけじゃない。バチッ!という音と共に、バレンシアのほうから一瞬だけ火花が飛び散ったのだ。その火花が消えると、ハエの羽音もしなくなっていた。
火花の先には、自分のめがねを掛けなおすバレンシアの姿があった。
そう。あれのせいなのかどうかは不明だが、バレンシアの目は今でも、メガネを外すことで電撃を放つことができるようになってしまったのだ。昔の歌謡曲に「君の瞳は○万ボルト」なんてのがあったが、それを素でやるとは、また一歩、うちのモノが非常識に磨きをかけたってところか。
そして、今の光景を見ても、うちのモノたちはほとんど驚かない。あえていえば、過電流に弱い電気製品チーム、つまりケイ、テルミ、レイカ、そしてシデンは少しびくっとなったが、それ以外のメンバーはもう慣れたもので、おしゃべりなんかしながら平然とメシを食っている。
俺も含めてだが、みんな、よほどのものじゃなければ驚かなくなってきたな。
「へー、ロボットか」
「ええ、いや~もう、科学技術はココまで来たかって驚きましたよ」
それが証拠に、話題はすでに鏡介が話す近衛家の突撃レポートに移っている。まあ俺も聞きたいからいいんだけどな。特に、あいつの家にいたっていう戦闘アンドロイド、「望月ナミ」の話は俺も大好きだ。人型ロボットは男のロマンだ。今度行ったら是非見せてもらおう。