02.なんかおかしな展開に その10
常盤弁護士さんが、遺言書を持って、うちのドアを閉じた瞬間。
「将仁、うらやましいぞこのヤロウ。夢のハーレムじゃねぇか、ええ?」
りゅう兄がヘッドロック&コブシグリグリをやってくる。
「いだだだだだ、止めろ止めろこのバカ兄ッ」
これ、今朝、ヒビキもやってきたよなぁ。こいつらの性格って、使っていた奴に似るのかね?
で、そのヒビキはというと。
「ハラ減ったな。なんかねぇかな?」
「ヒビキお姉ちゃん、どうしたの?冷蔵庫の中なんて見て」
「今日は買い物をしていないでしょう。お米と納豆しかないですよ?」
「んなこと言ってもさぁ、ハラ減ったんだからしゃあないだろぉ。あたしゃ燃費が悪いんだから」
「ふーん、そうなんだ。ケイたち電気製品とは違うのかな?」
「まぁ、内燃機関持ってるからねぇ」
やっぱり人とは違うな〜と、一瞬思ったんだが。
「ぐああああ、イタイイタイコラ離せ離せぇいいかげんにしろこのバカ兄貴!」
「バカとは言ってくれるなぁこの」
グリグリが俺を現実に引き戻した。ヒビキのときは、ヘッドロックされたときに後頭部に柔らかいモノが当たって実はちょっと嬉しかったんだが、兄貴にされるとごつごつで痛いだけで嬉しくもなんともない。そのくせ、俺が首を抜こうとしても器用に角度を変えてホールドしてくるので全然抜けない。
なにしろこのバカ兄貴、真田流兵法術とかいう、インチキのようでれっきとしたホンモノの武術を身につけているのだ。
ただでさえ体格で負けている上にそんなハンデがあるせいで、俺は兄貴にケンカで勝てた事がただの一度もない。負けっぱなしは悔しいので俺もその兵法術をやってみたんだが、同じ格闘術を一緒にやっていたら兄貴に到底追いつけないことに気付いて、結局止めてしまった。
兄貴はそれから俺の頭が変形するんじゃないかと思うほどグリグリを続けた後、やっと開放してくれた。
「おーし、んじゃ、みんなでメシ食いに行くか!」
で、俺を解放した後。兄貴はいきなりそんな事をぶちあげた。
なんでも、臨時収入があったからぱーっとやろう、ということらしい。
「やっほーぅ、龍之介兄ちゃん話せるぅー!」
「わあぁ、助かったでしょう、龍之介さん」
「さっすがあたしの昔の持ち主だ、気前いいねぇ!」
モノ軍団は、さっそくメシに釣られてくれた。やっぱり、外でメシを食うのは楽しいんだろう。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん、行こうよぉ、ねぇ行こうよぉ」
と思ったら、ケイがまとわりついてくる。
「将仁ぉ、悩むことぁないだろ。学生が貧乏なのは当たり前なんだからよ」
そしてヒビキが俺の襟首をむんずと掴んで、ものすごい力で引きずっていく。
「うわこら引っ張るな、伸びるっ」
「はいはい、将仁さん、靴ですよ、どうぞー」
その横で、引きずられる俺の足に、テルミが器用に靴を履かせる。なんでこいつは居間にででーんと鎮座していたテレビだったくせにこんなに器用なんだろうか。
「ほらぁお兄ちゃん、立ってよ。ズボン破けちゃうよ?」
玄関まで引きずられたところで、ヒビキが手を離すと同時にケイが俺の腕を取って立たせようとする。
兄貴に飯を奢られるのはちょっと癪だったが、モノ軍団の楽しそうな顔を見ると、まぁいいかと思ってしまった。
どうも、作者です。
ちょっと息抜き、といったシーンでしょうか。
実は、まだ02.は終わりません。
主人公が寝付くまでにあと一人、擬人化が登場します。
しかも、場合によっては年齢制限が要るかも(笑)
そのへんは、少しだけ期待していてくださいw