10.なにがお嬢様だ その3
全くの予想外な攻撃に思わず飛びのいてしまい、俺はベッドからずり落ちた。それだけならまだしも、まだ腫れが引いていない左頬をベッドの角にぶつけてしまったもんだからたまらない。
「ぐおおおおおおおおおっ!」
生命の危機すら感じる激痛に俺は床を転げ回る。
「M、Master!?」
「どうしたんですかぁ!?」
そこにかけられる、2人ぶんの女の子の声。
少し痛みが引いてきたところで、一旦は腫れが引いてきた左頬を押さえつつ顔を上げる。
「Are you all right?」
「また、腫れちゃったんですかぁ?」
そこには、金髪メガネの巨乳娘と、銀髪(白い髪だとおばあちゃんみたいなのでこう言うことにした)メイド服の巨乳娘が、共に心配そうな表情で俺を覗き込んでいた。
「・・・・・・クリン、お前なんでここにいるんだ」
痛みをこらえながらメイドのほうに声をかける。
バレンシアの乳を揉むのに夢中だったせいかもしれないが、入ってきたのに全然気がつかなかったし、音も聞こえなかった。
「あぅ、お体のキズやアザを、落として差し上げようと思いましてぇ」
腫れたのがぁ、なんとかなりそうだって聞きましたのでぇ、とクリンはそう続ける。そういや、キズとかアザとかならなんとかできるかも、とか言ってたっけな。
「But、doorはcloseしていたハズデース」
「はいぃ、鍵が掛かっていましたのでぇ、ドアの隙間からぁ、入らせてもらいましたぁ。そうしましたらぁ、将仁さんがぁ、バレンシアさんとぉ、そのぉ、なにかしてらしたのでぇ」
ちょっかいを出した、というわけか。しかしそれならそうと声をかけてくれてもよさそうなもんだが。
「でもぉ、将仁さん、ひどいですぅ」
一人で納得していると、いきなりクリンが、上目遣いでそんなことを言ってきた。
「私を差し置いてぇ、バレンシアさんにちょっかいをかけるなんてぇ」
「・・・・・・は?」
「胸が揉みたいのでしたらぁ、私に言ってくれればいいですのにぃ」
ちょっと待て、なんでそうなる。
「だぁってぇ、将仁さんとはぁ、全身くまなく肌を合わせ合った仲じゃないですかぁ」
そう言いつつ、妙に色っぽい目をしたクリンが俺の首に手を回してくる。
「そりゃ、お前は元々浴用のスポンジなんだからそうなんだろうってこら顔が近うわっ」
ちょっとあせりながらそんなことを言っていると、いきなりねっとりしてあったかいなにかが俺の顔の左を下から上へとねぶっていった。クリンの長い舌が、俺の顔を舐めていったのだ。
「まひゃひとひゃぁ~ん、ろうれふかぁ?ひもひいいれふかぁ?」
「わ、うわ、あわ、わわ」
しかも、舐めるだけではなく体まで密着させてくるのだ。ふんわりとしたなんか柔らかい感触が左の腕越しに伝わってきて、その、頬が自然と緩んでしまう。
「Hey、Master!Youはミーとのphysical contactをtakeしているのデース!Please show me(私を見て)デース!」
その一方で、さっきまで自分の胸を俺に掴ませていたバレンシアが、負けじと俺の右腕を抱きかかえてくる。こっちは、サイズで上回り、くわえて適度な反発力があり、その・・・・・・いいもんだ。
鏡介、ゴメン。お前に苦労かけている間、俺はこんな幸せなシチュエーションを満喫しちゃってる。ケイ、こんなお兄ちゃんを許してくれ。
鼻血が出そうなこの状況を満喫していると、不意にバレンシアの予想外な台詞が耳に入ってきた。
「OK. I see Miss Chrin. Youはyour breastでMasterのinterest(関心)をcatchしタイデースねー?」
な、なんだ?と思ってそっちを見ると、そのバレンシアのメガネが一瞬きらりと光ったような気がした。こいつ、なんかやる気か?
と思った直後。
「ひゃあぁっ!?」
クリンが変な声を上げた。
見ると、バレンシアの右手が、なぜかクリンの胸に伸びており、のみならずそれをもんずと握っていたのだ。
「らっ、なっ、何するんですかぁっ」
舌を引っ込めつつ、クリンがその手を振り払うと逃げるように後ずさる。
「ミーがyouのベンテンボールをmakeするデース!それにハmany many dataが必要デース!」
一方、バレンシアのほうはなんか目が据わっている。その目のぎらつき方は怒っているようでもあり、実験したくてうずうずしているようでもあり、いろんな意味でちょっと怖い。
「You大人しくresearch(調査)されるデース!」
そして再びクリンの胸に手を伸ばし、むぎゅっと鷲掴みにする。
「ひゃああああああっ!?」
「Don’t escapeデース!Hate(痛い)なコトはnot doデース、ダカラ大人しくresearchされるデース!」
クリンは当然ながら逃げようとする。結果として俺から手を離したのだが、今度のバレンシアの手からは逃れられなかった。同じように俺から手を離したバレンシアが、空いた左手でもクリンの胸をむんずと掴んでいたからだ。
クリンはそのまま仰向けに倒れる。その上にバレンシアがマウントポジションで乗っているので、クリンがバレンシアに押し倒されたような感じだ。しかもバレンシアの手は相変わらずクリンの胸を掴んでおり、のみならず何やらわきわきと指を動かしている。
なんかレズもののエロDVDにでも出てきそうな光景に、俺の下半身は思わず反応してしまう。
「Hmm、ミーのbreastよりa little bit softデースネー。Formハ・・・・・・」
「ひゃっ、ふえええ、ま、将仁さぁん、た、助けてくださぁぁいぃぃ」
マウントポジションのままいいようにされ、クリンは顔を赤くしつつ涙目でこっちに懇願してくる。
正直、助けたくなる、というより股間のICBMを以って襲いたくなる光景だが、実は襲い方がよく判らん。一応、まだ17歳だし。
というわけで、俺が取った選択肢は。
「邪魔みたいだから退散するわ」
クリンを見捨てて、部屋を後にすることだった。