09.幽霊って何ですか その12
「あーあ・・・・・・」
午後の授業を受けながら、俺はちょっと後悔していた。
ケイを怒らせるというリスクを負ったにも関わらず、結局俺は賀茂さんに対し、大した事は聞き出せなかったのだ。自分の話術の無さにがっかりしてしまう。
ただ、盛り上がった話題が、ないわけではなかった。
うちの兄貴の話だ。
「ご実家のお人て、真田はんの今の状況、知ってはるん?」
きっかけは、こんな賀茂さんからの質問だった。
「ああ、うちの兄貴が来たことがあるから、知ってると思うけど」
「え、真田はん、お兄はん居てはるの?」
「ん、ああ、まあ血は繋がってないけどな。なんでだ?」
「いやぁ、うち、養子はん言うたら、お子が居てない夫婦はんが貰うもんやと思うとったさかい。気ぃ悪うせんといて」
「別に気にはしねぇけど、んー、俺が言うのもなんだけど、親父もお袋も兄貴も、ちょっと変わってるからなぁ。ホントかどうかは知らねえけど、兄貴が「弟が欲しい」って言ったのがきっかけなんだと」
「へぇ?そら羨ましゅうおすなぁ」
「そうか?そういう賀茂さんは、兄弟とか・・・・・・はいないんだっけ」
「うちは一人っ子どす。お兄ぃはんとか、おったらええなぁ、と思たことはありますけど。そんお兄いはんって、どないなお人ですのん?」
「どないって、まあよく言えば前向き、悪く言えば楽天的バカかな」
「あらら、ずいぶんな言われようどすなぁ」
「そんなもんだって。当事者の俺だって混乱するうちの状況を見ても、「女の家族が増えた」なんて言ってあっさり受け入れていたし」
「はぁ、理解あるお兄ぃはんどすなぁ」
「いや、あれは何にも考えてないだけだと思うぞ」
こんな感じだ。思い返すと、兄貴を出しにするつもりが、逆に出しにされたような気がする。
「まあ、ケイとかを出しにしなかっただけましか」
今日のところは、そう思って納得することにした。