01.それは1本の電話から始まった その2
きーんこーんかーん。
4時間目の授業が終わると、教室は一斉にあわただしくなる。
うちの学校には食堂がある。AセットBセットCセットにラーメン、うどん・そば、カレーなどなど、食べ盛りの学生の胃袋を満たしてくれるメニューがそろっている。
俺なんかはそっちで飯を食うんだが、弁当持参している奴ってのもいる。
そして、その中にはこんな羨ましい奴もいる。
「はい、お弁当」
「おっ、サンキュ。やはぁ、また凝ってるなぁ」
「そうかしら、でも最近こう言うじゃない。栄養のバランスとか考えると、一日30品目を目安に、ってこら、人が説明してるのにっ!」
「むっ、んぐっ、あー、わりいわりい、腹減ってたもんだからさ」
「んもう、しょうがないわね。ほら、こんなところにソースついてる」
「わ、い、いいよそのぐらい自分で」
「鏡もなしでどうやって見るのよ。ほら大人しくしなさいってば」
言っておくが、これは俺が参加している会話ではない。俺の後ろの席で、俺とサッカーの話で盛り上がっていたシンイチと、クラス委員長の佐伯が繰り広げている会話である。
この二人の仲については、俺がキューピッド役になってしまったこともあり、思い出すと腹が立ってくるので詳しい説明は控えるが、今ではクラス公認のバカップルなのだ。
夏休み明けに、「ついに一線を越えた」と自慢げに言われた時は、祝福の気持ちを込めて思いっきり張っ倒してやったもんである。
「あーあ、あんにゃろ、毎回毎回見せ付けてくれやがって」
それを見て愚痴っているのは、俺と同じ女に縁のない野球小僧、ヤジローだ。俺とこいつは、そろってシンイチのことを「昼休みの裏切り者」と呼んでいる。
聞いているとさらにむかついてくるので、とっとと食堂に向かうことにする。腹を立てる前に彼女を作ればいいだけの話なんだが、そんな簡単にはいかないのが現実だ。それこそ、俺にとっては県大会で棒高飛びの大会新記録を作るより難しい。
高木の奴にだって彼女が出来たんだ、俺だって、彼女はほしいんだ!
「よし、食うぞこの野郎!」
「当たり前だ、こん畜生!」
というわけで、俺は彼女がほしいという思いを食欲に昇華することにして食堂に向かった。
どうも、作者です。
第2話にもなって未だに擬人化のぎの字も出ないですいません。