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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
08.慣れというのは恐ろしい
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08.慣れというのは恐ろしい その19

「別に、構わないと思いますよ?」

帰って来た常盤さんにさっそく床下から出てきた子狐の話をしたところ、そう即答された。

「狐は天然記念物ではありませんから法律上も問題ないですし、それにここまで関わったのですから、どうせなら最後まで責任を持って世話をするのが筋だと思いますし」

ただし、常盤さん本人は弁護士の仕事を優先させるつもりらしく、あまり関われないと明言していた。まあ、世話をしたがっている連中はいっぱいいるから、問題はないだろう。

というわけで、常盤さんからのお墨付きも貰ったその子狐は、元気になり次第晴れてうちのペットになることになった。

だから、夕飯の後にみんながその子狐のまわりに集まるのも自然なことだ、と思う。

「名前、何にしようか?」

そして、そんな流れになるのも当然といえば当然なんだが、これが意外に難航した。

まず、童話とかでよく見られる「コン」を案に出したところ、賛同する奴が少なかった。どうもあまりにベタすぎるので「適当にやっている」と思われたらしい。特にバレンシアは、「Foxのcryはnot “konn”デース、コンというnameはI can’t approve(賛同)デース!」と、インターネット上で拾ってきた狐の鳴き声のサンプルを披露してまで反対していた。

また、風呂に入れたクリン曰くこの子狐はメスなのだそうで、もっとかわいいのがいいとのこと。俺はコンもかわいいと思うんだが。

だが、じゃあそういうモノたちがどんな案を出したかというと、これがまた「お前らも人のこと言えないレベルじゃないか」と突っ込みたくなるものばかりだった。

たとえば「チビ:ちっちゃいから」「トンガリ:耳が尖っているから」「くつした:足の毛色が靴下をはいているように見えるから」「フサ:しっぽがフサフサしているから」「いなり:お稲荷さんより」「あぶらあげ:狐の好物と言われるものだから」「firefox:コンピューターソフトの名前」「ライデン:第2次世界大戦の戦闘機の名前」「九尾:伝説の九尾の狐より」などなど。

九尾なんて名前をつけたら本当に妖怪になってしまいそうだ、なんて思いつつ、箱の中で動かない子狐の姿を見る。生きてはいるらしいが、ぴくりとも動かないのでちょっと心配だ。

ふと、その子狐を包んでいる毛布から何かまっ白いふさふさしたものがはみ出しているのに気がついた。何かと思って毛布をめくってみたら、なんのことはない、尻尾の先端だった。マンガやイラストだとキツネの尻尾の先は白くなっているのをよく見るが、実際に白いとは知らなかった。

しかし、クリンが懸命になって洗ったのだろうか、数時間前まで床下で泥まみれになっていたとは思えないぐらいにきれいな毛並みだ。全身はキツネ色、というのだろうか、枯草というよりなんか金色に近いような毛で覆われ、さっき見た尻尾の先と頬のあたりは本当に真っ白だ。

狐って、生で見るとこんなにきれいな動物なんだなぁ。

「・・・・・・そうだ」

そいつを眺めていたら、不意にあるフレーズが頭に浮かんできた。

「名前、魅尾みおなんてどうだ?」

誰となくまわりに聞いてみる。尻尾がきれいだったからなんだが、口に出してみたらこれ以上はない、というぐらいにしっくり来た。

「Meow?今度はcry about catデースかー?」

「それを言うならニャオだろ。将仁が言ったのはミ・オ」

「でもぉ、バレンシアさんが披露したキツネさんの鳴き声、ネコさんのに似てましたよぉ」

「ミオちゃんかぁ。ケイはかわいいと思うな」

「少し軟弱な感じがするが、悪くはないな」

反応も、コンのときよりは悪くない。

そんなこんなで、子狐の名前はめでたく「魅尾みお」になった。

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