表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
08.慣れというのは恐ろしい
188/385

08.慣れというのは恐ろしい その18

「なるほどねぇ」

ひと通りの説明を受け状況を把握した俺は、毛布に包まった子狐を改めて見た。

うちのモノたちが、全力をかけて助けた命だ、俺としても、助かって良かったと思う。

それにしても、犬や猫、ネズミやモグラとかならともかく、よりによってなんで「化ける」と言われる、言い換えれば妖怪に一番近い動物の狐なんだろうか。まさかマジで妖怪じゃあるまいな、なんてことを考えてしまう。なにしろうちにいるほとんどがモノの化けた(正確に言うと俺が化かした)連中なので、仮にそうだとしてもおかしくはないような気がするのだ。

うーん、類は友を呼ぶと言うしなぁ、そんなのが寄ってくる家なんじゃないだろうな。

そして、そういうモノノケが「いる」前提で物事を考えるようになっていることに、少し悲しくなる。

まあ、悪く考えるとどつぼるだけだ。お稲荷さんの使いでもあるんだから、うちに福をもたらしてくれると信じよう。うん。

「とりあえず、まだ万全ってわけじゃないだろう。常盤さんに話して、明日医者につれていこう」

「OK。じゃア、ミーはnearlyなanimal hospitalをsearchしておくデース」

「ん、気が利くな。それじゃついでに、どんな予防接種が必要かとかも調べといてくれ。しばらくうちに置くことになりそうだからな」

「Leave it to me.(任せてください) ちゃーんとexamine(調査)するデース!」

バレンシアは、そう言って小さくガッツポーズすると、軽快な足取りで2階へと消えていった。さっそく調査にとりかかるらしい。

「あら、いけない。もう夕食の準備に取り掛からないと」

「じゃあワタシも手伝うアル、遅くなてしまたし、二人でやたほうが早くできるアルでしょ?」

「ふふっ、そうね。それじゃ、手伝って貰おうかしら」

「了解アル!」

そしてレイカと紅娘はキッチンへと消えていく。

「あ、そうそう。忘れないうちに言っておきましょう。クリンさん」

「はぁい?」

「あなたには、明日もう一度、床下に入ってもらいたいのでしょう」

「え・・・・・・えええぇぇぇぇ!?」

テルミの言葉を聞いて、クリンが、動きは緩慢ながらも全身で拒絶の態度を示す。よっぽど嫌らしいな、床下に入るの。

でも、テルミがその程度で引き下がるはずもなく、ちょっと厳しい口調で言葉を続けた。

「えーじゃありません。床下には、この子の親御さんがいらっしゃるのでしょう。お外に出してあげないとかわいそうでしょう」

「で、でもぉ、もうお亡くなりになってますよぅ、臭いも凄かったしぃ、ハエさんが飛んでましたしぃ」

「じゃあ尚更でしょう。大体、床下に入れるのはあなたしかいないでしょう」

テルミにぴしゃりと言い切られ、クリンはずぅーんと落ち込んでしまった。

「うううぅぅぅぅ、私ぃ、こんな事をするためにいるんじゃないはずなのにぃ」

そうつぶやくクリンの背中が、すすけているように見えた。

「キツネちゃん、元気になるといいね」

「うむ、我々にこれだけ世話を焼かせたのだ、責任をとって元気になってもらわねばな」

「まあ目立った外傷はなかったみたいだし、目を覚ませばあとは大丈夫だろ」

「目を覚ますまで、見守っていようかなぁ」

「だったらあたしがみてようか?ケイは明日学校があんだろ?」

「あ、そうだったの」

こっちでは、ケイとシデンとヒビキがその子狐を前に何か話し込んでいる。

なんか、こうしているとすることがない。意識が戻らない子狐に何かする気にはなれないし。

「それにしても、すごいタイミングだなぁ」

ふと、今日の昼に学校であったことを思い出す。あれは猫だったが、先生と一緒になってかわいいを連発していたあの二人の姿は、なんかほのぼのするものだった。

あのときは、「うちにペットがいたらいいかもな」と確かに思ったが、まさかその日のうちにペットが出来るとは思わなかった。

「そうっすねえ、ホントによかった。見つかるのがあと少し遅かったらと思うと」

鏡介が、ちょっとずれた相槌を打ってくるが、まあここはそういうことにしておこう。俺もこのチビの命が助かったことは嬉しいのだ。

あとは、常盤さんがどんな反応をするか、それが少しだけ気になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ