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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
08.慣れというのは恐ろしい
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08.慣れというのは恐ろしい その14

「んー、あれ、ナニアルかなー?」

「何してんだ、紅娘」

真田家のリビングの、南側に向いた大窓はバルコニーに続いている。そのバルコニーにうつ伏せになって床下をのぞいている紅娘に最初に気づいたのは、ヒビキだった。

「あ、ヒビキサン。やー、そこに何かいるのが見えたアルから」

頭をあげた紅娘が、床下を指差す。そこには、床下の湿気を逃がすための風通し用の穴があいているのだ。

「床下にかい?ネコか何かじゃないかい?」

「私もそかなーと思うアルけど、暗くてよく見えないのコトよ。それになんか、動いてる様子ないアル、もしかしたらただのゴミかもアルね」

「どれ」

紅娘に促され床に降りたヒビキが、同じように地面にはいつくばって床下をのぞく。

ほとんど光が入ってこない床下は、当たり前だが真っ暗である。いくつか開けられている風通し用の四角い穴が逆に暗い空間の中に浮かんでいるように見える。

今のぞきこんでいるのもその穴のひとつであり、本来は鉄格子がはまっているのだが、彼女らがのぞいている穴に限ってはそれが外れていた。

「あー。こりゃ確かによく見えないわ。お前、よく見えたな」

「やっぱそう思うアルか。明かりになるもの、借りてくるアル」

「いや、ちょっと待ってな」

そう言って立ち上がろうとする紅娘を引きとめると、ヒビキは一度目を閉じ、そして開いた。

すると、ヒビキのところから床下の奥まで、まっすぐ照らし出す光の道が現れた。しかも、懐中電灯などよりずっと明るい。

「あー、確かに何かあるな、ただのゴミじゃなさそうだ」

「・・・・・・あー、ちょといいアルかヒビキさん。それ、ナニアルか?」

「ん?何ってそりゃ、暗いから中を照らして」

「そじゃなくて、なぜ目が光ているアルか!」

そう。中を照らす光は、なんとヒビキの両目から放たれているのだ。

「あー、こいつか。こりゃヘッドライトだよ。夜道を走る際には必要だろ」

つまり、モノの時にヘッドライトだった部分が、人になったときに目になっているということらしい。

「便利アルなー、羨ましいアル。さすが文明の利器は違うアル」

「うっ、お、おい、変なこと言うなよ、照れるじゃねぇか、あははは」

紅娘の言葉に本気で照れたのか、少し顔を赤らめながら、照れ隠しといわんばかりにヒビキが紅娘をばしーんとひっぱたいた。

「アイヤー!?」

叩いたところがちょうど紅娘の背負う鍋だったため直撃はしなかったが、ヒビキがパワーセーブを忘れていたらしく紅娘の体はそのまま数メートルふっとばされ、ごろごろごろっと床を転がった。

「な、何するアルか!ワタシじゃなかたら大怪我だたアル、注意するヨロシ!」

その数メートル先で起き上がった紅娘が、まさにぴゅーんっといった感じで戻ってくると、ヒビキに向かって抗議する。

「わ、判った判った、悪かったよ、ごめん」

さすがに今のは自分が悪いので諸手をあげて非を認める。

「それよりさ、床下の奴、どうすんだよ」

「あ、そうだたアル」

そして、二人は再び軒先にしゃがみこむ。

「うーん、何だろ、毛皮っぽいように見えるんだけど」

「毛皮アルか?やぱりイヌサンネコサンネズミサンアルかな?」

「そんな気になるんだったら、あたしがここで照らしてるから、お前、中に入って見てこいよ」

「は?」

「あたしじゃ頭しか入らないよ。お前ならあたしより小さいだろ」

「それは無理アル、試したけどワタシも頭までしか入れなかたアル。」

「その鍋置いて行ったら入れんじゃないか?」

「それ以前に肩がつかえるアルね」

そして、その場でああでもないこうでもないと口論が始まったとき、通りかかった者がいた。

「何をしてらっしゃるんですかぁ?」

クリンだった。取り込んだばかりの洗濯物が一杯に入った洗濯籠を抱えている。

「おう、クリンか。いやな、この中に何かいるみたいなんだ」

「えぇ?何かって、何ですかぁ?」

どうやら、クリンも興味を持ったらしい。リビングの床に洗濯籠を置くと、二人が陣取っている風通し用の穴の前にしゃがみこんだ。

「それが判らないから、どうやて確認しよか考えてたアルよぉ」

「とりあえず見てみな、あたしが照らしてやっから」

「は、はいぃ」

そして、再びヒビキが目をライトのように光らせて中を照らす。

「ほら、あたしが照らしてるところ。見えるだろ?」

「あぁー、確かに何かいますねぇ。お休み中なのでしょうかぁ?」

「ワタシが見つけたアル。イヌサンネコサンネズミサンかなと思うアルけど」

「ここから入ったみたいだけど、いかんせん狭くてさ。うちらじゃ入れないんだよ」

「そうですねぇ、お二人とも固そう、じゃなくてぇ、頑丈そうですしいぃ」

そして3人が穴の前でうーんと考え込んだ、そのとき。突然、紅娘が何かを思い出したようにぽんと手を叩いた。

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