08.慣れというのは恐ろしい その11
「ふぅー・・・・・・」
本日最後の授業が終わり、肩の荷が下りた俺は、ひとつ大きく息を吐いた。
今日は、シンイチもヤジローも部活へと向かっている。あいつら、部活は休まないんだよな。
「そういや、今日はケイもいないんだよな」
昼にうちに帰してしまったからなあ。思い返してみると、ケイを連れて登校したのは今日でまだ3日目なんだが、ポケットの中でさわぐあいつがいないとなんか寂しい。
まあそれはそうとして。今週に入ってから始めて、俺は誰にも付きまとわれない、完全にフリーな状態になったのだ。
「さてと、そろそろ行くかね」
そして、今日は俺も部活があるからとっとと帰るわけにはいかない。仮にも棒高跳びのレコードホルダーでしかもまだ2年生なんだから、怠けるわけにはいかない。
しかし、先週の今日あたりから色々ありすぎて、結果としてトレーニングをサボっていたから、あまり偉そうにも言えないんだよなぁ。1日さぼると取り返すのに1週間はかかるし。
でも、だからこそこれ以上さぼってはいけない。
思考がだんだんとマイナスによってきたので、考えるのを一旦止めて荷物をまとめ、席を立った。
「おっ、マサ今日はもうお帰りかい?」
「大変だねぇお兄ちゃんも」
「バーカ、部活だよ部活。レコードホルダーは大変なんだよ」
ヒマ人連中に冷やかされながら教室を後にし、急ぎ足で下駄箱へ向かうと、上履きから靴へと履きかえる。
「あら、真田はん。どちらいかはるのん?」
外へ出ようとしたところで、外から入ってきた賀茂さんと鉢合せした。って、なんでこの時間帯に外から来るんだ、忘れ物でもしたんだろうか。
「どちらって、部活だよ。そういえば賀茂さんは部活入ってないの?」
「あ、へえ、今とこは」
「ホント?色々引っ張りだこなんじゃないのか?」
「そうどすなぁ、今日もこれから茶道部とおぉけすとら部にお呼ばれしてます」
「そっか、大変だなぁ」
「ま、のんびり決めさせてもらいますわ」
そしてにっこり微笑む。もうちょっと話をしていたかったが、時間もないことだし、むこうも用事があるので、適当なところで切り上げ、俺はその場を後にした。