07.穏かな日は遠く その38
「じい、いるか」
「なんでございましょう、隼人様」
重厚なつくりのデスクに向かった男が声をかけると、見事な髭が印象的な、執事服を身につけた老人がどこからともなく姿をあらわした。
「真田将仁に、我々以外でちょっかいを出している奴らがいると聞いたが、調べはついたか?」
「はい。ちょうど今、その資料をお持ちしたところです」
そう言いながら、老人はA4ぐらいの肌色の封筒を隼人の前に置く。
隼人がその封筒を開き、中に入っていた書類を取り出すと、ページを1枚めくった。
「・・・・・・近衛クローディア?」
「はい。アメリカの資産家の娘だとか」
「ふむ・・・・・・」
そして、隼人はぱらぱらとその資料の束をめくっていく。
「目標は、擬人を作り出す“力”か」
「はい。クローディア本人がそれにそうとう執心しておるようで、そのためだけにわざわざアメリカから真田将仁と同じ学校に転入してきたようです」
「ふん、金持ちの道楽か」
そして、隼人はひと通り目を通した資料をばさっとデスクの上に投げ出す。
「いかが致しましょう?」
「暫くは様子見だ。我々の敵になるか味方になるか、早急に見極めなければならんのは確かだが、今は判断材料が少なすぎる。送球に情報を集めろ」
「承知いたしました」
執事服の老人は、そう言って頭をさげる。
ふと、隼人が、思い出したように老人のほうへ向き直った。
「そういえば、じい。お前が手配した者はどうなんだ。ちゃんと動いているのか?」
「その点についてはご心配なく。先ほど、真田の家に行って、様子を探ったという報告を受けております。もっとも、外部の人間も居合わせたため、派手に動くのは避けたようですが」
「確か、同級生として紛れ込んだんだったな」
「はい。それで、少々手強そうなので、これから自分の手駒を増やしていくと言っておりました」
「む、人手の要請か?」
「いえ、新たに式神を呼ぶとのことです」
「しき・・・・・・まあいい。妖怪大戦争でもなんでも、依頼を達成すれば俺も文句は無い」
少々疲れたような顔をして、隼人は椅子の背もたれにもたれかかった。
「全く、今はいつだ?科学が迷信を払拭する21世紀じゃなかったのか?」
「お言葉ながら、隼人様。それを言うなら、この私めも」
「わかってる、わかってるからもう少し考えさせてくれ」
老人の言葉に、隼人は、椅子に沈みこんだまま、口だけでそう答えた。
どうも、作者です。
ようやく7日目が終わりました。
ところで、そろそろ書き溜めてきたものが少なくなってきたので、投稿はしばらく休んで書き溜めたいと思います。
それでは、再開するまで、ごきげんよう。