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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
02.なんかおかしな展開に
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02.なんかおかしな展開に その4

そのころ。

「へぇ、家の中って、こんなふうになってんのかい」

将仁に家の中に押し込められたヒビキは、玄関に仁王立ちしながら、興味深げに眺めていた。元が屋外で使われる「バイク」というものだっただけに、屋内は見るのも感じるのも初めてだった。

「どちらさまでしょうか?」

そのヒビキに、声をかけてくる相手がいた。それは、モノトーンのメイド服に身を包みその上から黒いマントを羽織った、若い女性だった。

互いに知らない同士なので、少しの間だけその場を沈黙が包む。

そしてその沈黙の後、何かを思い出したように、ヒビキが口を開いた。

「あんた、もしかして、モノが人になった奴かい?」

「えっ?」

「いや、将仁がさ。うちには擬人化しかいないからって言ってたから」

「まあ、それではあなたも、将仁さんの力で人の姿を得たのでしょう?」

「ああ、ついさっきな」

「そうでしたか」

いいながらそのメイド、テルミはヒビキの後ろを覗き込む。そして、少しだけ眉をひそめた。

「その肝心の、将仁さんはどちらにおいでなのでしょう?」

「ん?将仁かい?あいつならとっくに学校に行っちまったぜ。遅刻するーっとか言ってよ」

「ええぇぇ-----―ッ!?」

突然、悲鳴のように甲高い声が部屋中に響いた。

それと同時に、だだだっと部屋の奥から何かがものすごい勢いで飛び出してくる。

そして。

ぼふっ。

「きゃ!?」

「おわっ!?」

その子は、玄関に立っていたヒビキの胸板に頭からぶつかった。その勢いは結構なもので、体格の違うヒビキの体が弾き飛ばされたほどだ。

「ったたた・・・・・・てだっ、誰?」

跳ね返されて上がりかまちにぺたんと座り込んだその子、ケイが鼻の頭をさすりながら、玄関に立つヒビキを見上げる。

「ったく、いきなりタックルをかまして、ダレはねぇだろうよ」

体勢を立て直しながら、ヒビキが自分の胸元をパンパンと払う。

「ケイさん。私たちの、新しいお仲間ですよ」

「へぇ、お前、ケイっていうのかい。あたしゃヒビキってんだ、よろしくな」

そしてヒビキは、大人が子供の視線に合わせるように身をかがめ、ケイの顔を覗きこんだ。

だが、そのケイの視線は、ちょっと外れたところをじーっと見つめている。ヒビキがその視線をたどってみると、自分の胸にたどりついた。

「ん?あたしの胸が、どうかしたのかい?」

「えっ!?」

そこで我に返ったらしいケイが、振り切れそうな勢いで首をぶんぶんと振りながら。

「ななななんでもないなんでもない胸が大きいなんて思ってないよっ」

なんてなことを口走る。

その様子を見て、テルミとヒビキは吹き出してしまった。

「かわいい奴だなぁ、お前」

ヒビキの、ライダーグローブが嵌められた手が、ケイの頭を軽くぽんぽんと叩く。

「むうぅぅっ、子ども扱いしないでよぉっ!」

「まあまあ、ケイさん。怒るとおなかが空いてしまうでしょう?」

それに対し、ケイはぷぅっと頬を膨らまし、テルミがなだめに入る。なんとなくほのぼのした空気がそこに流れた。

「それで、さっき見ていたこいつだけどな」

ひと段落したところで、ヒビキが自分の胸をぽんぽんと叩く。

「これ、エンジンなんだよね」

「エンジン?」

「ああ。あたしゃバイクだったからね。この姿になる前はこんな感じだったんだ」

言いながら、ヒビキが玄関口で四つんばいになる。そうすると、着ているライダースーツの模様も相まって確かにバイクを思わせる。

そして、バイクのエンジンがあるところには、確かにヒビキの胸のふくらみがあった。

「そういえば、あんたたちは元々なんだったんだい?」

立ち上がりながら、ヒビキが2人に話しかける。

「あ、ケイは携帯電話なんだよ」

「へぇ、ケータイかぁ。やっぱ将仁のか?」

「うんっ!」

「あっははは、元気な子だ。よろしくな」

そして、ヒビキの目が今度はテルミに向けられる。

「あ、私は、プラズマテレビのテルミと申します。よろしくお願いしますでしょう」

テルミは、そこで深々と頭を下げる。それは、本職のメイドのように丁寧なものだった。

「ははっ、いいよそんな丁寧に挨拶しなくても。同じ将仁の持ち物じゃないか。ま、これからよろしくな」

「はい、将仁さんのために頑張りましょう」

「うん!」

三人目のモノが、受け入れられた瞬間だった。

どうも。作者です。


キャラが違う連中がいきなり同じ部屋に押し込められてすぐに仲良くなるのか、と突っ込まれたら返す言葉も無いんですが、まあそのへんは軽く流してください。


次は、擬人化三人組のまったりした会話シーンです。

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