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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
07.穏やかな日は遠く
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07.穏かな日は遠く その23

「写真とか録画とかしておきたいな〜、このヤジローの情けない姿」

「していますでしょう」

「うわ!?」

ぽつりとこぼしたところ、後ろからいきなり声がけられた。いつのまにか、テルミが後ろにいた、というか、俺がいつのまにかテルミがいるところに来ていたといった方が正しいか。

「私もただここに立っているだけではないでしょう。私の内臓HDDに、この部屋の様子を記録している所でしょう」

「へ?どうやって」

「私は、見たものを画像にできます。そして画像をHDDに記録することができます。完璧でしょう」

小声でそう言ってにっこり微笑むテルミ。さすがといえばさすがだが、この抜け目の無さはちょっと怖い。

「でもなんでそんなことを」

「ええ、後で見直して、ご学友の人となりを把握するのに役立てようかと」

なんかいらないことまで知られてしまいそうだ、と思うのは気にしすぎだろうか。

「何の話をしてはりますのん?」

そこに、今度は賀茂さんが顔を出してきた。

「へ、あ、いや、別にたいしたことは、なあ」

「はい、庭の手入れの話を少々」

「そうそう、ちょっと、草むしりが必要かなーってさ」

「はぁ、そうどすかぁ」

とっさのでまかせだったが、テルミはしれっと俺に合わせてくれる。おかげで、賀茂さんも納得してくれたらしい。

「それより、輝美はん、どしたな。お手水(ちょうず)はんはどちらですのん?」

「お手水はん?あ、はい、少々お待ちください」

賀茂さんは、テルミに何か小声で尋ねていて、テルミはそれにやはり小声で答えている。しかし、小声と言ってもこの距離だと十分聞こえてしまう。

「将仁さん、こちらの方を、トイレまで案内してきます。宜しいでしょうか?」

「ああ、いいよいいよ、そんなことまで断らなくても」

「はい。では、どうぞこちらでしょう」

賀茂さんは、どうやらトイレのある場所を聞いていたらしい。テルミの案内に素直についてリビングを出て行った。

「さて」

ドアが閉じたのを見届けて、改めてリビングの中を見回す。

「うへへへいたたたたた」

「貴様、なんという弛んだ顔をしているのだ!」

「シデンさぁん、お客様なんですからぁ、顔をつねるのは止めましょうよぉ」

まず目に付いたのは、クリンに腕を抱きかかえられて鼻の下を伸ばしながら、シデンに頬を引っ張られて顔を歪めているヤジローの姿だった。

野球部では同級生や後輩から鬼と呼ばれているヤジローだが、そいつらが今の姿を見たらどう思うだろう。

「もう、シンイチったらいっつもいっつも」

「あ、そのぐらいにしたほうがいいんじゃないスか?」

「真田君は黙ってて。これは私たちの問題よ」

「あのー、俺、将仁さんじゃないんスけど」

「あ・・・・・・えーと、加賀見さんだっけ」

「ええ、その、あまりの剣幕に、この子もびびっちゃってるんで」

こっちでは、正座しているシンイチに向かって、委員長が説教をしている。そこに声をかけた鏡介まで一喝されており、その後ろではケイがこわごわといった様子で覗き込んでいる。

なんというか、委員長とシンイチのカップリングが出来たときに想像したことのある絵だ。鏡介もそんなところに口を出さなけりゃいいのに。なんてなことをぼんやりと考えた。

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