07.穏かな日は遠く その22
「Hello♪」
「おじゃましますぅ」
鏡介が開けっ放しにしていたドアから、また別の奴らが入ってきたからだ。
俺はもう、誰が入ってくるか判っている。そして判っているだけに、ちょっと危ないような気がする。
「!!!!!」
そして想像したとおり。その二人を見た瞬間、シンイチとヤジローががたんといすを跳ね飛ばして立ち上がった。
「パツキンだ!」
「メイドだ!」
「巨乳だああぁぁぁぁ〜っ!」
そしてバカ二人が叫んで身を乗り出す。
「What!?」
その中でも特にでかい方、バレンシアがちょっと面食らった表情になる。
まあ、この二人は、我が家の巨乳ツートップだもんな。しかも、どっちもそれほど胸を強調しない格好なのに判るほどのサイズだから、シンイチやヤジローにとっちゃ妄想がいくらでも広がるというもんだ。
「うおおっ!てめぇーっ、羨ましいぞこの野郎!」
「晴香よりでかいじゃねーか、うらやましいだだだだだだだ!」
そのシンイチが、機嫌が悪くなった委員長に耳を引っ張られ、引っ込んでいく。佐伯はクラスの中でも小さいほうだから余計に気に障ったんだろう。
「・・・・・・はぁ、圧倒的やわ・・・・・・」
均整が取れたスタイルを誇る賀茂さんも、さすがにこの二人のそれには敵わないので軽ーく落ち込んでいる。まあ無理も無い。特にバレンシアが現れたときは、うちのモノたちがみんなそろって落ち込んでいたぐらいだしな。
「おいマサてめぇ、もしかしてあの外人の胸、揉ませてもらったりしたことがあるのかよ?」
俺をヘッドロックしたヤジローが、締め上げながらそんなことを聞いてくる。どうやらこいつは巨乳に対して幻想を抱いているクチか。
だが、こう言っちゃなんだが俺の場合、この巨乳でいい思いをした記憶は無い。クリンは俺の性欲を暴走させようとするし、バレンシアは俺の顔をめり込ませて窒息させようとしたし。
「そんなもんないわい!」
「うそつけ、これだけいるんだから一人ぐらいいるだろ」
「そんなセクハラじみたことできるか!」
だから、そう叫んだんだが、どうもこいつは納得してくれない。
「だめぇーっ、お兄ちゃんをいじめないでーっ!」
「貴様、まだ痛い目に遭いたいのかぁ!」
ケイとシデンのちびっこコンビ(この名前で呼んだらシデンに殴られた)が止めに入って、俺はやっと解放された。
「Hey, Mister!? このimpolite(無礼)なguysは、ダレでーすカー?」
開放された俺に、ちょっと機嫌が悪そうなバレンシアが聞いてくる。そんなイヤなことは言われてないと思うんだが、巨乳と言われるのはイヤなんだろうか。
「あ、俺の学校のクラスメイトだよ、ってお前さっき電話を受けただろ」
「What!? このimpolite(無礼)なguysがMisterのclassmateデース?」
「そう怒らないでやってくれ、悪気はないんだから」
「Of cource. Vicious(悪い)なwillあるナーラ、ミーはnot forgive(許さない)デース!」
だんだん腹が立ってきたらしい。バレンシアは腰に手をやり仁王立ちしている。そうすると余計に胸が目立つんだが。
そういえばこいつ、俺をMasterじゃなくてMisterと呼んでいるな。こいつはこいつなりに考えてくれたらしい。
ふと、もう一人の巨乳、クリンが何をしているのかと思って周りを見てみると。
「あのぉ、将仁さんにぃ、そんなことをぉ、しないで下さいよぉ。クリンからのお願いですぅ」
クリンは、ヤジローの腕を取ってぎゅっと抱きかかえ、ヤジローのことを困ったような目でじっと見つめながらそんなことを言っていた。
意識しているのかどうなのか、彼女の大きな胸がヤジローの腕に押し付けられている。メイド好きで巨乳好きのヤジローは、それだけで鼻の下がいつもの倍ぐらいに伸びただらしない顔になって、こくこくとうなずいている。