07.穏かな日は遠く その18
「あーっ、その声、マサのケータイで話してた子か!?」
シンイチが素っ頓狂な声をあげる。あんだけでよく判ったな、さすがロリコン。
「それより、ちょっと。真田ってどういうこと?真田君と同じ苗字じゃないの、もしかしてホントの妹さんなの?」
委員長は相変わらず耳ざとい。
だがおかげでまたケイは萎縮してしまい、泣きそうな顔でぎゅーっと俺に抱きついてきた。ケイって、初対面の人にはほんとに警戒心が強いな。
「お前ら、こんな小さい子を脅かしてどうするんだよ」
ケイの頭を撫でながら庇ってやる。
「別に、苗字が同じの親戚がいたっておかしい話じゃないだろ。この子は人見知りが激しいんだから、あまりいじめないでくれよ」
「そうだ。貴様らこそ人の家に乗り込んできて偉そうに」
シデンも俺の横に来てそう言い放つ。偉そうなのはお前もなんだが。
「あ、将仁サンお帰りなさいアル!」
そこにまた新しい、今度はやたらと機嫌のいい声がする。
そっちを見ると、赤い服を着た女の子がキッチンに続くドアを開けてニコニコ顔でこっちをのぞいていた。
こんな妙ちきりんな喋り方をするのはあいつしかいない。
「紅娘、何してんだ?」
「はいナ、客人が来ると聞いたアルから、飲茶の準備してたアル」
それと同時に、ぷんと食欲をそそる匂いが漂ってくる。
確か、中国の飲茶ってのは、お茶を飲みながら、点心ってやつを食べるんだよな・・・・・・はて。うちに、そんなもん作れるような道具があったかね?
「シデンサン、ケイちゃんサン、ちょと頼まれて欲しいアル。カウンターに置いた茶器と食器、テーブルに持ていてもらえるアルか?」
「あ、は、はーい」
ちょっと考え込んでしまった俺の後ろから、紅娘に促され、ケイが出てきた。
「いたしかたなし。では上官、その客たちを席に案内してやるが良い」
客を迎える側にしては尊大な言葉を残してシデンが続く。
そして、二人は湯呑や急須やポットをカウンターで受け取り、リビングのテーブルへと持っていくと、かちゃかちゃと音を立てながら並べ始めた。
どうやら、モノたちはこいつらを歓迎してくれるみたいだ。
「じゃあ、テキトーに座ってくれ」
俺はとっとと帰ってもらうつもりだったんだが、ここは張り切っているモノたちの気持ちを尊重することにする。
そして、シンイチと賀茂さんは各々適当な席に座る。
「なんで、なんでなんであいつばっかり」
ヤジローは、席にもつかず、俺よりでかい体を縮こめてしゃがみこみ、床にのの字を書きながら何やらぶつぶつとつぶやいている。
まあ、あいつはほっといてもいいだろ。どうせ食い物が出てきたら機嫌が直る。
「ちょっと、真田君。今の子は?」
委員長は、紅娘に興味を持ったのか、俺の横でカウンターをのぞいている。その委員長の言葉で、俺は紅娘を紹介していなかったのを思い出した。