07.穏かな日は遠く その4
「話は戻るけれど、真田君。どうして駅にいたのかしら?真田君って徒歩通学だし、アパートは駅と方向が違うはずよね?」
歩き出してすぐその話になる。当然といえば当然だ、引越しのことは、クラスの連中にはまだ話してない。
「そういや、昨日は来るのがいつもより早かったよな。昨日から電通だったんだろ、なんで隠してたんだ?」
「別に隠してた訳じゃないよ。でも昨日のうちのクラスはそれどころじゃなかっただろ?」
うん。嘘は言っていない。昨日はクラス中が賀茂さんと近衛お嬢様のことで一日中もちきりで、俺の話なんか誰も聞いてなかったじゃないか。
「それはそれ、これはこれでしょ。連絡網とかも作り直さなきゃいけないし」
さすがに委員長、押さえるところはしっかりしている。
「けど、変わったのは住所だけだから連絡網は問題ないんじゃないか?あれ電話番号しか載ってないだろ」
「なに!?お前、引っ越したのか!?」
あ、しまった。自分で墓穴を掘ってしまった。
「ん、ああ、ちょっと訳があってな。えーと、親戚同士で、共同生活することになって、その親戚のうちに、居候することになったんだ」
本当のことなんて言える訳が無い(そっちのほうがずっと嘘っぽい)ので、とにかくその場はごまかしにかかることにする。
「親戚って、さっき電話で話していた子?」
「ああ、まあそんなところだ」
その後もちょっと問答があったんだが、通学途中ということもあってあまり細かいことは聞かれなかった。だがそれは単に尋問が後回しになっただけに過ぎない。そう思うと、ちょっと、げんなりしてしまった。