06.季節外れの転校生 その26
ヒビキの奴また適当なことを言いやがって、俺は別に困ってはいないぞ。
「ですが、1対11ではない可能性も、十分にありえます」
常盤さんが、少し話を戻す。
「陰陽師は、式神と呼ばれる一種の怪物を、召還して使役すると言われていますからね」
言われてみれば、映画とか漫画とかの世界だと、式を放つとか言って、人の形に切った和紙とかお札とかが、鬼とか鳥とか人とかに化ける・・・・・・って、人になったら俺の物部神道の力と同じか。
「役行者が使った前鬼・後鬼とか、安倍清明が使役した十二月将とか」
常盤さん、ずいぶんと詳しいのね。弁護士には全然関係なさそうなんだけど。
しかし、名前からして、なんか凄そうだ。そんなものと激突するような事態にはなりたくないし、こいつらがぶつかるような事態もごめんこうむりたい。
「But, まだthat’s Miss KamoがJapanese sorcererだというevidence(証拠)はnothingデース」
「いっそのこと、その賀茂とかいう奴、うちに連れてきたほうが早いんじゃないかい?」
「ぶっ!」
突拍子も無い方向にいきなり話が飛んで、思わず噴出しそうになる。
「待てぇーい!勝手に話を進めるなー!」
なんとか口の中のものを飲み込んでから叫ぶ。
なんてったって無理だそんなの。自分で言ってしまうのもあまりに悲しいが、正直、俺は女の扱いは不得意だ。話しかけることはできても、話のネタは今日でたぶん使い果たしたから長続きしない自信がある。明日は多分、ちゃんと教科書を持ってくるだろうし。
・・・・・・考えれば考えるほど自分がヘタレに思えてくる。
「だ、だいたいだな、今日会ったばかりで、次の日にいきなりうちに来いなんて言って、来る奴がいるか?」
「そうそう!来ない来ない来ないもん!」
俺が発言するとすかさずケイがあいの手を入れる。ケイの奴、そうとう賀茂さんが嫌いらしいな。
「おいおい、なにマジになってんだよ。ちょっとした冗談じゃねえか」
「落ち着きなさい、だれも将仁くんがそんなことをするなんて思っていないわ」
すると、他の連中はそろってそんなことを言いやがった。こいつらまで、俺を朴念仁と思っているのか。モノにまでそう思われているのか。落ち込むぞ畜生。
「まあまあ将仁サン、そう落ち込むことナイアル。ハイ、たたきひとつどうぞアル」
「あ、ど、どうも」
「ぬうぅっ!上官!これを食うのだ!」
「うわ、もがっ!」
何を考えたのか、シデンが俺の口にかつおのたたきを突っ込んできた。
「あっ、シデンちゃん抜け駆け!はい、お兄ちゃん、あーんしてっ!」
今度はケイがかつおのたたきを俺の前に差し出す。
お前ら、飯ぐらい普通に食わせろ、こら。せめて違うものを出せ。
思わず目で鏡介のほうを見てしまうが、鏡介はさっさと自分の分を平らげて食器を流しに持っていくところだった。あのやろ、逃げやがったな。
「ほら、ケイさん、シデンさん、紅娘さん。お行後が悪いでしょう」
そんな俺の状況を助けてくれたのはテルミだった。本当に助かる。
「将仁さんも、早く食べてしまって下さいな。今日は火曜日、もうすぐ鑑定士の時間でしょう」
今度は俺にも釘をさしてくる。最近は本当にしっかりしてきたよな、最初はすっとぼけたこと言っていたのに。
まあ、見たいテレビがあるのは確かなので、素直に飯を平らげることにした。
どうも、作者です。
賀茂さん陰陽師疑惑その2です。
考えてみれば、一応現代が舞台なのにネタは平安時代とか飛鳥時代とかからの伝統と、昔話に出てきそうなほどに古いんですよね。
でも多分、これ以上古いものは出てこないと思いますので、お付き合い願います。
さて、次回は食後のまったりした時間ですが、そこでも話にひと展開あります。
乞うご期待!