06.季節外れの転校生 その21
「――――――というわけデス。Do you understand?」
それからおよそ3分後、バレンシアの説明は終わった。が。
「No!判るか!」
思わずそう叫んでしまった。
なにしろ、画面はよく判らない図形や記号が把握できないようなスピードで切り替わっていき、それに合わせたらしいバレンシアの言葉も早口すぎて聞き取ることすらできない。何かのプレゼンを超高速で早回しして見せられたような感じだ。
「Hmm, それデハ、beginning(最初)からexplain(説明)を・・・・・・」
「ストップ!」
思わず手を伸ばしてバレンシアの口をふさいでしまう。こいつ、こんな性格だったのか。
「ほら、な、のどが渇いただろ、梨でも食って一休みしろ、な」
手にしたディスプレイを振りまわしながら口をもごもごさせていたバレンシアだったが、まもなくおとなしくなった。
「・・・・・・もう、Masterには、no arguing(かなわない)デース」
手を離すと、バレンシアはそう言ってから、楊枝が刺さった梨に手を伸ばした。
ふと横を見ると、常盤さんがにこにこしながら立っている。
「常盤さん、見てないで止めてくださいよ」
「ふふっ。ごめんなさい、微笑ましい光景だったものですから」
なんか、親戚のお姉さんみたいなことを言っている。あのー、一歩間違えたら、セクハラになるんですが、これ。常盤さん、内々でやることについては本当に甘いと言うかルーズだよな。
「ほれ、鏡介も」
梨をひとつとって鏡介に差し出す。
ぐったりした鏡介が、机に突っ伏したままで手だけを伸ばした、そのとき。
「うっぎゃーーーーーーっ!」
いきなり悲鳴をあげ、鏡介がひっくり返った。
「うわ、ど、どうした!」
「ぐううぅぅぅ」
驚く俺の目の前で、鏡介が右腕を押さえている。ちょうどそこにはあのバレンシアが作ったわけの判らない装置の一部がくっついている。
なんでも、仕組みはよく判らないが、正しくない動きをすると電気ショックが流れるんだそうだ。なんつーものを作るんだバレンシアは。
「Oh, sorry sorry. Power offするのをforgetしていたデース」
そう言いながら、バレンシアが基盤のコネクタを引き抜く。が、一つかと思ったら、4つあった基板上のコネクタを全部抜いたのだ。
「なあ、電源のスイッチとはないのか?」
「Ah, quickle(急ごしらえ)なdevice だったのデー、omit(省略)したデース」
まったく悪びれる様子も無く、バレンシアがそんなことを言い放つ。
「そんないきあたりばったりの機械を、俺はつけられていたんスか」
それを聞いた鏡介が、改めてげんなりしてしまった。
「Don‘t mind, don’t mind. Next timeからハ、ちゃんとswitchをつけマース」
鏡介の心のうちを知らないバレンシアは、あっけらかんとそう宣言する。
「なあ、鏡介、えらい奴に目ぇつけられちまったなぁ」
「まったくッスよ」
そして、俺と鏡介は向き合ってため息をついた。
どうも、作者です。
こういうシチュエーションだと主人公のほうが痛い目に遭うことが多いのですが、今回は鏡介が痛い目に遭っています。
私も鏡介はキライじゃないんですが、なぜかこういう役回りになっちゃうんですよ。
とりあえず開放されたところで、次回に続きます。
乞うご期待!