06.季節外れの転校生 その20
「No, no, no, そこは違うデース!」
「もう少し肩の力を抜いて、ほら、そうです」
「いて、いででででででっ」
常盤さんの部屋の前に行くと、常盤さんとバレンシア、そして鏡介の声が聞こえた。
声から想像するに、鏡介のやつ結構しごかれているみたいだが、痛いってのは何事なんだろう。
「常盤さーん、鏡介ー、バレンシアー、入るぞー」
一応他人の部屋なので、ノックをしてから中に声をかける。
「Oh, Master.おかえりなサーイデース!」
がちゃ、とドアを開けて出てきたのはバレンシアだった。
ちょうど一休みしようと思っていたようで、俺が持ってきた梨を見ると快く中に入れてくれた。
中では、常盤さんが座るはずの席で鏡介がつっぷしていて、常盤さんはその横で家庭教師か何かのように立っている。
「お帰りなさい、お疲れ様」
常盤さんは、こっちを向いて笑顔を返してくれる。一方、鏡介のほうはよほど疲れたのだろう、片手を小さくひらひらさせただけだ。
「Master、todayは、return to home(帰ってくる)がa little late(ちょっと遅い)デスねー」
「ん、今日は部活だったん・・・・・・」
そこまで言って、俺は鏡介の右腕に何やら見慣れないものが取り付けられているのに、気がついてしまった。
「なんだこれ!?」
思わず叫んでしまう。なにしろ、鏡介の右腕には、大小色とりどりのコードと、コンデンサやらトランジスタやらがついた基盤が組み合わさった、昔のロボットを想像してしまう奇怪な装置がついていたからだ。
すると、バレンシアは一瞬メガネをきらんっと輝かせ、そして高らかに宣言した。
「Yes!これこそミーのinvent(発明)したspecial machine、名づけて“シビレルフウリンカザン”デース!」
思わず、ひっくり返りそうになった。なんだその、シデンが聞いたらきりもみ宙返りしそうなネーミングは。さすがにこれは常盤さんも苦笑するしかないようだ。
「で、なんなんだこれは」
ひっくり返るのをなんとかこらえ、改めて質問をする。なんかこの後になが〜い説明が待っているような気がするが。
「O.K!それでハ、explain(説明)するのデース!」
案の定、バレンシアは再びメガネをきらんっとさせた。
「これハ、Mr.キョースケに、right handでcharacter(字)をneatly(綺麗)にwriteさせる、specialなitemなのデース!」
「そうか、説明ありがとうな」
最初の発言で機能が判ってしまったので、ちょっとかわいそうだがそこで打ち切る。だって、多分その後が長いもん。
「Hey, Master! My explanation(説明)は、まーだnot finishデース!」
予想通り、バレンシアはもっと喋りたいのか抗議を始める。
「じゃあ3分で説明してくれ。長いと眠くなる」
そう言えば諦めるかな、と思ったんだが、甘かった。
「O.K. Master. でハ、3minuteで、explainしマース!」
そう言うなり、バレンシアは後ろからディスプレイを取り出し、そしてメガネをくいっと上げてから両手でしっかりと構えたのだ。と同時に、ディスプレイのスイッチがオンになり、画面が浮かび上がる。マジで3分で説明するつもりか、オイ。
「Look here. Are you ready?」
そして、バレンシアはそのメガネをきらりんっと輝かすと、解説する時には普通は言わないようなことを言いやがる。
ちょっと待て、と思う間もなく、バレンシアの説明が始まってしまった。
どうも、作者です。
サブタイトルに関係ない話が続いておりますがご容赦願います。
陽気なスーパーコンピューター(と作者が呼んでいる)バレンシアは、マッドサイエンティストもどきでもあったみたいですw
ちなみになんでモドキかというと、一応は無差別じゃないからです。
さて、バレンシア作「シビレルフウリンカザン」とは一体どんなmachineなんでしょうか?
次回を乞うご期待!