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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
06.季節はずれの転校生
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06.季節外れの転校生 その17

まだ眠そうなケイを部屋の充電器に置いて、下の階に下りる。

差し入れできそうなものを物色するために台所に行くと、またクリンと遭遇した。

「あらぁ、将仁さぁん。また、お会いしましたねぇ」

「あれ、こんどは何やってんだい?」

「はぁい、手すきになりましたのでぇ、流し台をぉ、綺麗にしているんですぅ」

なるほど。暇つぶしになるようなものもないもんな。なんてなことを考えながら、流しを覗き込む。クリンの言うとおり、白くて細かい泡が、ステンレス製の流しの内側にたくさんついている。

だが、そこに本来あるはずのものが、一つない。

「たわしとかは使わないのか?」

そう。普通は洗剤とかクレンザーとかをつけたたわしやブラシを使ってゴシゴシ磨くものだと思うのだが、なぜかクリンはそういうものを持っていないのだ。のみならず、普通は手あれを防ぐために手袋とかをすると思うんだがそれすらしていない。

だが、クリンはきょとんとして俺を見たあと、くすっと笑い出した。

「いやですよぉ、私が何なのかぁ、忘れちゃったんですかぁ?」

「へ?何なのかって、スポンジだけどありゃ風呂用じゃ」

「もう、私だって日々研鑽しているですよぉ。見ていてください、綺麗になりますからぁ」

にこっと笑うと、クリンは水を張った荒い桶に手を入れた。手についた洗剤の泡が水面に浮かび、そして再び引き上げると、ぼたぼたと水が滴り落ちる。

クリンが鼻歌混じりに手をぎゅっと握ると、まるで水を含んだスポンジを握ったかのように、激しい勢いで水が滴り落ちた。

そして、手で流しを撫でるようにこすると、ステンレスのシンクが顔を出した。

続けて、ステンレス製の三角コーナーを同じように手でこすると、汚れが見る見る落ちていく。

洗い桶の中の水をざばーっと流し、蛇口をひねって水を出すと、流れに手を浸し、鼻歌交じりに両手をこすり合わせたり握ったりする。すると、汚れたスポンジをゆすいだように桶の中の水が濁っていく。さすが元スポンジといったところだろうか。

「うふふっ」

「楽しそうだな」

「えぇ、だってぇ、綺麗になるのはぁ、気分がいいじゃないですかぁ」

そして洗い桶の汚れた水を再びざばーっとあけ、三角コーナーにネットを被せる。

「それじゃ、最後にぃ」

まだ何かやるのか?と思って見ていると、クリンはシンクの端から中を覗き込むように身を屈め、そしてなぜか舌を出した。

舌といっても、クリンのそれは口の中に収まると思えないほど長い。40センチはある肉色の帯が、銀色のシンクにべろんと投げ出されると、まるで蛇のように動いてシンクの壁にべたっと張り付く。

そしてその舌がまるでワイパーのようにシンクの表面を舐めていく。なんかどっかの妖怪みたいな光景だが、その舌が通過すると、シンクの表面がまるで磨いたような光沢を放ち始めた。

「はいっ、これでぇ、お掃除完了ですぅ♪」

「・・・・・・あ、えーと、おつかれさん」

嘘のような光景を面白がっていると、いつのまにか最後まで見ていてしまった。

どうも、作者です。

クリンのスポンジとしての本領発揮です。

なんかすでに浴用という肩書きが無くなっていますが、頑張っているのはわかってもらえたと思います。

さて、この後ですがもうしばらくクリンとのやり取りが続きます。

どんなことをするのでしょうか?

次回を乞うご期待!

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