06.季節外れの転校生 その16
「あ、おかえりなさぁい」
もう少しスパーリングをするという二人を残し、家のドアを開けると、そこには床にモップがけをするクリンの姿があった。
「こんな時間になるまで掃除か?」
「えぇ、手持ち無沙汰だったものですからぁ」
なんかほっとする。こいつはいつもどおりだ。
「あらぁ?ケイさんはどちらに行かれたのですかぁ?」
「あ?ああ、ちょっとな。眠いっていうから寝かしてやってる」
「あらあら、それでは静かにしなくてはいけませんねぇ」
紅娘と同じようなことを言って、クリンはにこっと微笑んだ。
自然なその微笑にちょっとどきっとする。
「他の連中は?」
「あ、はい、レイカさんとヒビキさんとテルミさんはぁ、買いだしに行っていますぅ」
「今日もか?」
確か、昨日も買い物には行っていたはずだ。そんなに毎日買い足すものがあるんだろうか。
「皆さん、毎日たぁっくさん食べますものねぇ」
だが、その一言で納得してしまった。11人の大所帯だから食べる量も半端ではないということだ。かくいう俺もその一端を担っているわけで。
「常盤さんは?仕事?」
「いいえぇ、バレンシアさんと一緒にぃ、鏡介さんの字の特訓をされていますぅ」
字の特訓?鏡文字を矯正するってことか?
「普通に書く字が鏡文字だとぉ、なにかと不便だ、とおっしゃいましてぇ」
まあ、言われてみれば、鏡介だって字を書くことはあるだろうしな。それを見過ごしていた俺は、もしかしたら甘いのかもしれない。
あとでなにか差し入れでも持っていってやるか。そう思いながら、俺は自分の部屋へと向かった。
どうも、作者です。
なんか、内容がサブタイトルと関係なくなって来ました。
ですが、1日はまだ続くので、これから話題に上るであろうことを待っていてください。
それでは次回を乞うご期待!