06.季節外れの転校生 その15
「ただいま」
「む、ようやく戻ったか」
「おかえりなさいアル」
うちの門をくぐり、庭にいたシデンと紅娘に声をかける。向き合って手や足を交差させていた二人は、俺の声に反応してすたたたっと駆け寄ってきた。
「なにやってたんだ二人とも」
「ふっ、見て判らなかったのか?話を切り出すきっかけとしては悪くはないが・・・・・・」
「何してたんだ紅娘」
「はいな、鍛錬してたアル」
「あっ、こ、こら上官、貴様が話をしていたのは、我ではないか!」
「だってお前だと長くなりそうなんだもん」
「きっ、貴様あっ!」
「じゃあ何の鍛錬をしていたかを説明してくれ。手短にな」
「う、よ、よかろう、では説明してやるから耳の穴をかっぽじってよく聞くがよい!」
だからそれが長いんだ、と言いたいのをぐっとこらえ、シデンの話に耳を傾ける。
話を要約すると、どうやら昨日のこと、つまり走って俺について来られなかったことがそうとう悔しかったらしく、体力トレーニングをやっていたらしい。元々はシデン一人でやっていて、途中から紅娘が加わったんだそうだ。そして、締めとして、二人とも格闘技の心得があるということでスパーリングみたいなものをやっていたところに、俺が帰ってきた、というわけだ。
「そちらが我々に合わせぬというから、こちらが合わせてやろうというのだ。感謝するが良い」
あれでも合わせたつもりなんだが、と言ったらまたすねて暴れだしそうなので黙っておく。こいつは軍人気質のわりにわがままだからなぁ。そのぶん分かりやすいけど。
「あ、そいえばケイチャンサンは?一緒じゃなかたアルか?」
「ああ、なんか眠いって言ってたから、寝かせてやってるんだ」
紅娘の質問に、ケータイのままのケイを入れたポケットを指差して答える。
「そうアルか、じゃあ静かにしないといけないアルね」
「そうならそうと先に言わぬか、気が回らぬ奴め」
すると、紅娘だけでなくシデンも声のトーンを落とした。
やっぱりなんだかんだいってもケイのことはかわいいんだな。そう思うと、なんとなく目じりが下がる感じがした。
どうも、作者です。
やっぱりシデンも紅娘も多少はお姉さんぶりたいようです。
とは言っても、二人とも現れたのはケイより遅いんですがw
それでは、次回を乞うご期待!