06.季節外れの転校生 その14
結局、賀茂さんは俺の高飛びの実力を見ると、そそくさと退散してしまった。
言っておくが、俺のせいじゃない。美人が来たもんだから、うちの男子部員が舞い上がってしまい、逆に賀茂さんに引かれたためだ。
「ほ、ほな、うち、他にも寄りたいとこがありまっさかい、ごめんやっしゃ」
そう言うと、逃げるようにどこかに行ってしまった。後で他の部員に「なんで逃がした」と文句を言われたが、濡れ衣もいいところだ。
そうこうしているうちに部活が終わり、俺は帰途についた。
ふと思い出したのだが、お嬢様のほうはアレ以来、まったくちょっかいを出してこなかった。なんだかちょっと気味が悪い。
だがそれ以上に気味が悪いのが、今、俺のポケットに入っているケータイだ。あれから、喋るのはおろか、震えもせず、うんともすんとも言わないのだ。最初はありがたかったが、ここまで静かだとさすがに何か変だと思う。
電車から下り、駅を出たところで、ケータイを取り出して開けてみる。すると、画面がいつのまにかデジタル時計からケイの顔に変わっていた。しかし、いつもと違い眠っているように目を閉じている。
「おい、ケイ?」
「・・・・・・んー・・・・・・あれ、おにぃちゃん・・・・・・?」
声をかけると、ケイはとても眠そうに眉をひそめる。そして、うっすらと目をあけると、とても眠そうな声をあげた。
「大丈夫か?もうすぐ家に着くけど」
「・・・・・・うん」
本当に寝てたのか、かなり眠そうだ。家に着いたら起こすと言ったら、小さくあくびをして、そのまま目を閉じてしまった。
珍しいこともあるな、と思いながら、ケイをポケットに入れた。
どうも、作者です。
転校生に逃げられ、お嬢様には放置され、電話も相手にしてくれない寂しい主人公氏の図です。
まあ、家に帰ったらまた騒がしくなるので、今回は軽く読み飛ばしてください。
次回は、モノたちのお出迎えです。と言っても、別に総出というわけではありませんが。
乞うご期待!