06.季節外れの転校生 その13
「誰と話してんの」
「うわっ!?」
だが、横からシンイチにかけられた声で、俺はまた現実に戻される。
「あ、こ、これは、ええと、そう、し、親戚の子だよ。最近引っ越してきてな、懐かれちゃったんだよ、ははは」
本当のことを言ってしまうわけにもいかないので、とっさにケータイをおさえ、そうごまかして場を取り繕う。自分でも分かるぐらい動揺しまくっている。
いかん、これでは変な奴に見られてしまいかねない。と思ったんだが。
「お前、よっぽど女の扱いに慣れてないんだな」
そいつには、やれやれといったため息とともに、肩にポンと手を置かれてしまった。違う、違うんだと心の中で叫んでも伝わるはずもない。
ちくしょーめ、あらいざらいぶちまけてやりたい!
「もーっ!抑えないでよーっ!ケイはまだ話が途中なんだからーっ!お兄ちゃんのスケコマシーっ!」
俺の手の下でケイがわめく。ってバカ、こんなところでそんなことを言うなって。
「お、おい、人が見てるじゃないか」
「ふーんだ、もうあることないことばらしちゃうもん!」
「わ、こら!あることはともかく、ないことはやめろ!」
「ふぅーん、あることならいいんだ」
「そ、そうじゃない、そうじゃないが、ここじゃまずいよ、みんな見てる」
そこまで言ったとき。隣からすっと手が伸びて、ケータイをひっさらっていった。
「かし」
「あっ!?」
賀茂さんだった。彼女は、開いたままの俺のケータイ、もといケイを自分の目の前に持ってきた。
「もしもし、こんにちはぁ」
そして、画面いっぱいに映っているケイの顔に驚く様子も無く、それどころかケイに向かってにっこりと微笑んで挨拶したのだ。
「悪いけど、将仁はんはうちと話をしてはるのやわ。あんたはんは、ちびっとおとなしゅうしといてな」
「え、ちょ、ちょっ」
そして、テンキーの上で指をすばやく細かく滑らせると、ぱたんとケータイを閉じた。
「これで、しばらくはおとなしゅうしてくはりまっしゃろ。ほな、行きまひょか?」
そして、俺にそのケータイを手渡しながら、そんなことを言う。
改めてそのケータイに視線を落とすと、あれほどぎゃいぎゃいと騒いでいたのが嘘のように静かにしている。開いて画面を見てみると、最近ちょっと見なくなっていた、かつて設定していたデジタル時計の画面が出ていた。
「なにを、したんだ?」
「へぇ?いややわぁ、ちびっと挨拶しただけどす。そないことより、ほら、うちに跳ぶとこ、見してくはるんでっしゃろ?」
賀茂さんは、それをごまかすかのように俺の制服の袖をひっぱってせかす。
俺は、何をしたのかを追求したかったのだが、それ以上に、その場の男どもの視線に耐えられなくなり、逃げるように教室を後にした。
どうも、作者です。
美少女転校生を連れ出すのに成功したようです。
これからの部活動でいいところは見せられるのでしょうか?
それでは次回を乞うご期待!
追伸:本編のサブタイトルの番号が、その14になっていましたので、その13に修正しました。