06.季節外れの転校生 その10
今日の昼飯は、購買で買ったパンとコーヒー牛乳だった。いつもは食堂で日替わりランチなんかを食べるんだが、今日はそうはいかない。ケイの奴、携帯電話の姿になっていても腹は減るようで、「おなかすいたー!」と催促されてしまったからだ。
その日は屋上に出て、二人でフェンスによっかかってパンを食った。妙にケイが嬉しそうだったのが印象的だった。
そして、腹には少し物足りない昼飯を済ませて降りてきたところで、俺は、今度は生徒指導室に呼び出された。正確に言うと、職員室に呼び出されたのだが、その呼び出した先生に、生徒指導室に行くよう指示されたのだ。
生徒指導室と言っても、実のところ使われたことがほとんどなく、部屋の真ん中にテーブルと椅子が置かれた物置、と言ったほうがあっている。問題のある生徒がいない、というわけではないが、校則がゆるーいのと、うちが基本的に進学校なので、進んでそのゆるーい校則を破って内申書を悪くしようとするやつがおらず、使われないので物置になってしまったというのが現状だ。
「ごめんなさい、待たせちゃったかしら」
しばらく待っていると、うちのクラスの担任である徳大寺先生が入ってきた。俺を呼び出したのは、この徳大寺先生なのだ。
「話というのは、2時限目の休み時間にあったことなのだけれど」
先生は、そう言いながら俺の向かいに腰掛けた。
2時限目の休み時間、というと、近衛お嬢様に下僕になれと言われ、迅に転ばされたあの時だ。あれはどう見ても俺が被害者なんだが、まさか俺が悪者になっているんだろうか。
「あのとき、近衛さんが言っていたこと、本当なの?」
「へ?」
だが、先生の話の焦点は、騒ぎを起こしたこと自体ではないようだ。
「あなた、西園寺と呼ばれていたでしょう。心当たりはあるのかしら?」
「あ、ああ、その話ですか。・・・・・・ええ」
言われてみれば、あのお嬢様は確かに俺のことを「西園寺」と呼んでいた。それを、先生に聞かれてしまっていた、ということらしい。
「実は、俺のことを西園寺っていう古い家の跡取りだって言う弁護士の人が、うちに電話をかけてきたんです」
聞かれていたんじゃしょうがない。俺は、常盤さんが現れてからのことを、なるべくあたりさわりのない範囲で話した。もちろん、擬人化のことは伏せてだ。
「・・・・・・そう、そうだったの」
すると、先生は妙に感慨深げに、大きく頷いた。なんなんだろう。
どうも、作者です。
主人公氏と担任の先生が急接近です。
何さて、何があったのでしょうか?
それは次回に明らかになります。
それでは、次回を乞うご期待!