06.季節外れの転校生 その6
次の授業は英語だった。どうやら賀茂さんは俺とは比較にならないぐらい英語が苦手らしく、本当に受験して高校に入ったのかと思うようなぶっとんだ訳をして失笑を買っていた。
だが、そのおかげでクラスの女子も彼女に対する嫌悪感はかなり薄れたらしく、俺の隣の席は1時限の休み時間よりもさらにやかましくなってしまった。
さっき行きそびれたので、トイレに行こうと席を立ったときだ。
いきなり、扉ががらっと開かれ、隣のクラスの男を何人か引き連れて、見たことが無い女が一人入ってきた。
クラス中の視線がその女に集中する。
「ねえ、あの人って、A組に転校してきた子じゃない?」
クラスメイトのひそひそ話が耳に入る。なるほど、転校生か。どうりで見覚えがないわけだ。
そして改めて見ると、その女は噂に違わぬ美人だった。おそらくハーフなのだろう、彫の深い顔に金色の縦ロールな巻き毛。そしてすらりと背が高く、モデルと見まがうスタイル。なんか、漫画とかに出てくる「お嬢様」をそのまま実写化したような感じだ。
うちの転校生の賀茂さんとは対極に位置する、派手で華やかな美人だ。おんなじ美人でも、こうもタイプがちがうもんなんだな、と、感心してしまう。
その女は、自分に関係ないはずの、知り合いもいないこの教室を何のためらいもなく横切り、なぜか俺の前で立ち止まった。
そして、手にしていた扇子をぱちんと閉じると、その先を俺に向けてこう口を開いた。
「あなたが、真田将仁さん?」
会うことはおろか、見たことすらない女にいきなり名前を呼ばれる。
「な、なんだよお前は」
あまり気持ちの良いものではないので、とりあえず聞き返す。すると、その女は、ふふん、という表現がぴったり当てはまるような表情になった。
「あぁら、これは失礼。私、本日を持ってこの学院に通うことになりました、近衛クローディアと申しますの」
そう言って、お辞儀でもするのかと思いきや、扇子を広げて口元に当て、高笑いをして見せた。少女漫画のお嬢様みたいなその仕草が、また妙にはまっている。
「へいへいそうですか」
だが、付き合っていたらまたトイレに行く時間がなくなりそうなので、適当にあしらって出口に向かって歩き始めた。
どうも、作者です。
もう一人の転校生の登場です。
真田家のシデンのごとく色々と騒ぎを起こしそうな子ですが、その時はまあ楽しんでやってください。
さて、次回ももうちょっとこのお嬢様がにぎやかしてくれます。
それでは。次回を乞うご期待!