06.季節外れの転校生 その2
「ふー・・・・・・」
やっとの思いで、ぎゅうぎゅうづめになった電車から這い出し、一息つく。
こんなのに、明日から毎日乗ってくるのか、少々滅入ってしまう。
ちゃーちゃーちゃらららちゃっちゃちゃー。
そんなときに、携帯が鳴る。この呼び出し音はケイからだな。
「もしもしぃ」
「ううぅ、お兄ちゃぁん、ケイ、なんだかもう疲れちゃったよぉ」
そのむこうから、疲労困憊なケイの声がした。あの混み方は、携帯電話にとっても辛いものだったらしい。
「ねぇえぇ、これから毎日、こんなのに乗ってくるのぉ?」
「他にないんだからしょうがないだろ、うちの学校はバイク通学は許可されてないし、送迎してもらうわけにもいかないし」
「うぅぅ、それはそうなんだけどぉ」
「ぐずるなぐずるな、俺だって同じなんだ。それより、今何時だ?時計見せてくれ」
何とかケイをなだめ、時計を見せてもらう。うん、まだ多少余裕はある。
改札を通り、少し歩いて、見慣れた通学路に出ると、今までのように学校へと歩いていった。
「ういーす」
校門が見えてきたところで、珍しくヤジローと合流した。
「今日は早起きだな。いつも朝錬がないときはけっこうギリギリに教室に入ってくるのに」
珍しいこともあるもんだと思って声をかけてみると、ヤジローは変な顔をした。
「そりゃこっちの台詞だぜ、お前が遅いんだよ。時計見てみな」
「へ?」
言われて、携帯電話を取り出し時間を見てみる。
「げっ!?」
そして、そんな声をあげてしまった。いつもなら席についている時間だったからだ。
うーん、ケイと一息ついてたら予想以上に時間が過ぎていたらしい。
くそー、すべりこみの常習犯であるヤジローに声かけられた時点で気が付くべきだった。
「こらやべぇじゃねぇか!先行くぜ!」
こんなところで無遅刻の記録を途切れさして内申書の点数を悪くするわけにはいかない。
何やら言いたそうなヤジローを後に残し、俺は学校の校門目掛けてダッシュした。
どうも、作者です。
満員電車で疲労困憊の主人公と携帯電話の図です。
ちなみに作者が同じ立場だったら、逆に電話に怒られていること間違いなしでしょうな。
さて。サブタイトルにも出ているのにまだ姿を見せない転校生ですが、字話でようやくお目見えとなります。
さてどんな人物なんでしょうか?
乞うご期待!